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震災乗り越えた小売市場 コロナ禍生き残りかけ奮闘

2021.01.14
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昨年12月に新装開店したジョイエール宇治川と上田幸雄代表理事=神戸市中央区下山手通8

昨年12月に新装開店したジョイエール宇治川と上田幸雄代表理事=神戸市中央区下山手通8

キャッシュレス決済ができるカードを端末にかざすセルバ名店会の北野良征さん=神戸市東灘区森南町1

キャッシュレス決済ができるカードを端末にかざすセルバ名店会の北野良征さん=神戸市東灘区森南町1

新型コロナウイルス禍で宅配を始めたマルシン市場の中村雅義さん=神戸市兵庫区東山町2

新型コロナウイルス禍で宅配を始めたマルシン市場の中村雅義さん=神戸市兵庫区東山町2

 スーパーとの競合などで小規模小売店が次々と姿を消す中、阪神・淡路大震災の危機を乗り越えた小売市場が生き残りをかけて奮闘している。建物を刷新したり、時代に応じたサービスで集客の新規開拓を図ったり。神戸市内の小売市場は震災前からの26年間で4分の1に減ったが、新型コロナウイルス感染拡大の中、苦境を乗り越えた商魂で巻き返しを図る。(大島光貴)

 「元気にしとってか」「元気すぎて困るわ」-。1月初旬、JR神戸駅近くの商店街で食品を扱う「ジョイエール宇治川」。新たに建て替えた店内で、運営団体の代表理事、上田幸雄さん(70)が、なじみ客と言葉を交わす。

 以前は市営住宅の1階で営業していたが、建物の老朽化に伴う解体で退去。約3億円をかけて建屋を新築し、1年半の仮営業を経て、昨年12月10日に新装オープンにこぎ着けた。前身の宇治川公設市場が1920(大正9)年に誕生して100年の節目だった。

 震災前の90年、各店舗の商品をスーパーのように陳列し、レジを共通化する「セルフ販売方式」を導入した。先駆けとして成功し、震災で壁に亀裂が入ったが、翌日に営業を再開。周囲の店舗が倒壊する中、市民の台所としての役割を果たした。

 仮営業中に減った客足は以前の7割にとどまるが、上田さんは「『待っとった』と言われるのがうれしい。他の店に流れたお客さんを呼び戻し店を伸ばす」と意気込む。

     ◇

 神戸市小売市場連合会によると、市内の小売市場は震災前の94年、88(約2400店)あった。うち、震災で6市場が全焼し、25市場が全壊。95年5月に77(約1800店)に減った。スーパーとの競争激化や消費形態の多様化に、店主の高齢化と後継難も重なり、昨年には21市場(約420店)にまで減少した。

 92年に同市東灘区の旧森市場が全面改築して誕生した「セルバ名店会」。震災では商圏が壊滅状態となり、さら地にスーパーが進出したが、空き店舗に各店の商品を集めて均一価格で売る取り組みなどで乗り越えた。2019年、市場内だけで使えるカードを刷新。現金をチャージして買い物できるキャッシュレス決済機能を持たせた。

 約8千人が常時利用。若い客が増え、小銭を煩わしく感じる高齢者にも好評という。企画した鮮魚店の北野良征さん(39)は「顧客のデータをもとに照準を絞った販売促進につなげたい」と話す。

 同市兵庫区の「マルシン市場」は、緊急事態宣言で外出自粛が求められた昨年4月から、宅配サービスを始めた。無料通信アプリのLINE(ライン)も活用し、市場を訪れたことがないタワーマンションの子育て世代からも注文が寄せられたという。

 店主らの平均年齢は68歳。宅配を担う漬物店の中村雅義さん(38)は「市場存続に向け、後継者問題に力を入れたい」と前を向く。市小売市場連合会の吉岡治会長(51)は「小売市場の狭い商圏の中で最も支持されるためには、ファンづくりが欠かせない」と話す。

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