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神戸大国際文化学部の優秀卒業論文賞を受けた田中はるかさん=神戸市中央区
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神戸大国際文化学部の優秀卒業論文賞を受けた田中はるかさん=神戸市中央区

 神戸大国際文化学部を今春卒業した中国残留孤児3世の田中はるかさん(23)=兵庫県西宮市出身=が、自身のルーツでもある残留孤児の視点を通じて「ポスト・コロニアル(植民地時代後)」を考察した卒業論文が、学部の優秀論文賞を受けた。執筆のきっかけは、留学先で受けた「あなたは何人?」との問い。日本が中国東北部で建国し、敗戦で消滅した「満州国」の経験は「(現在の日本でも)変容しつつ継続している」と結論付けた。(金 慶順)

 大学3年次に留学したフランス・パリで、田中さんは学友に何人かと問われ、「日本人」と答えながら違和感を覚えた。

 母方の祖父は、終戦時に4歳で旧満州に取り残された残留孤児1世。祖父は養父母に育てられ中国人女性と結婚したが、1989年、妻や子どもと共に日本に永住帰国した。母は帰国後、日本に留学中だった中国人男性と出会い結婚。田中さんはその間に生まれた。

 国籍は日本。だが血縁を考えると4分の3は中国人だ。両親同士は中国語で会話し、父は今も日本語が得意ではないが、一方で田中さんは中国語を話せない。そんな自分は、何人なのか。フランスの同級生たちは、「母はトルコから来たよ」「ルーツはコンゴ」と国籍ではない答えを堂々と話していた。

 帰国後、社会に出る前に自分のことを知ろうと卒論に取り組み始め、残留孤児の子女に聞き取りを実施。日本と中国の言語や文化に「強み」と肯定的に捉える3世の男子大学生がいれば、「中国が嫌い」と叫んだめいの姿を忘れられない2世の女性がいた。また、田中さんの祖父も「(卒論を)違うテーマで書いてほしい」と話し、口を閉ざしたという。

 田中さんは「70年以上たった今でも多様な『葛藤』という形に変化して、残留孤児1世の記憶は再度経験され続けている」と考察。支配された側だけでなく旧宗主国である日本の社会内部にも「深く刻印が残された」とした。

 4月、大手化学メーカーに就職した。海外拠点での勤務を希望しており、「いろんなルーツを持つ人と出会えたら」と期待する。問題の風化を懸念しながらも「私たちは複雑な背景をポジティブに捉えることのできる初めての世代」と前を向いている。

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