神戸

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大貝がたっぷり入った「貝焼き」=神戸市長田区駒ケ林町6、万味
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大貝がたっぷり入った「貝焼き」=神戸市長田区駒ケ林町6、万味
大貝のつぼ焼き。器はニシ貝だ=神戸市長田区水笠通3、やまもとや
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大貝のつぼ焼き。器はニシ貝だ=神戸市長田区水笠通3、やまもとや
アサリと比べても大きい大貝=神戸市中央卸売市場本場
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アサリと比べても大きい大貝=神戸市中央卸売市場本場

 神戸っ子が愛する食べ物は数あれど、「これは神戸独特やな」と、大阪出身の記者が特に感じる食材は「大貝」。口に含むと、かむほどにあふれる濃厚なダシ。関西人全般に好まれそうな気がするのだが、神戸に来るまでは、飲食店でも魚屋さんでも、見たことがなかった。お好み焼き店や祭りの屋台。この街でよく出合うのは、何か理由があるのだろうか-。

 神戸市中央卸売市場本場(兵庫区)で貝類を中心に扱う仲卸「大島商店」の辰巳欣孝社長(58)、辰巳和之専務(54)の兄弟に話を聞いた。

 昭和初期から鮮魚卸を営む同社。取り扱う大貝は現在、愛知・知多半島産の天然物に限られる。時期にもよるが、殻付きで1日30~50キロを市内のお好み焼き店や鮮魚店に卸す。お好み焼き店は店舗数に比例し、長田区に集中している。

 30年ほど前は1キロのむき身が千円未満で「庶民の味」だったが、近年は目に見えて価格が上昇。需要は変わらないが、仕入れを控える店が増えたという。「昔はお好み焼きのミックス焼きにも必ず入ってた」と2人。「ダシが出る、おいしい貝で、加熱で硬くなりすぎない身もいい。他に代わりのない貝やね」と話す。

 よく食される長田区で、街の声を聞いてみた。丸五市場(同区二葉町3)で「そば焼 いりちゃん」を営む入口茂子さん(75)は太子町の出身。55年前に結婚して来た長田で、初めて大貝を食べたという。釣りが趣味の亡夫が、釣果としてよく持ち帰った。「長田港に砂浜があった頃は、そこでも採れたみたい。須磨や塩屋にも出掛けていた。買うもんではなかったなぁ」。家ではバター焼きなどにして楽しんだという。

 大貝を載せた「貝焼き」を、同区駒ケ林町6のお好み焼き店「万味」で調理してもらった。店主の狩野一代さん(69)が、薄く焼いた生地にキャベツと大貝の切り身をたっぷり載せて焼き上げる。仕上げには自慢の「どろソース」。コテで口に運ぶと、ぷりぷりの身から出るダシとソースが混じり合い、最高だ。

 1枚900円。貝焼きには生の身しか使えず、高値はこたえるがファンが多いので頑張って続けている。「遠方から来るお客さんが多い。大阪の人も貝焼きを目当てに来るよ」。やはり大阪にはないのだろうか。

 お好み焼きと逆に、一度冷凍した方がいいダシが出るというのは、屋台でもおなじみの「つぼ焼き」。同区水笠通3の居酒屋「やまもとや」は、創業した40年前から提供する。器のニシ貝に、大貝の身を水から炊いたおつゆと三つ葉を注ぐ。貝焼きとはまたおもむきが違うおいしさがある。

 ここまで食べ歩き、入口さんの言葉が脳裏によみがえった。「神戸は海が近いから、貝も身近やったんちゃうかな」。なるほど、大貝は昔なじみの味。神戸では家庭で、店で受け継がれているのかもしれない。(上杉順子)

 【大貝】 和名「ウチムラサキ」のとおり、内側が紫色の二枚貝。播磨や岡山ではホンジョウ貝、愛知では大アサリと呼ばれる。肉厚で食べ応えがある身で、煮込むと良いダシが出る。春先から夏場にかけてが旬。神戸では、お好み焼き店で根強い人気があるほか、新年には初詣や十日えびすの屋台で「つぼ焼き」の具としても親しまれる。

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