神戸

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宵宮で宮入りするだんじり
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宵宮で宮入りするだんじり
歯を食いしばり、だんじりを持ち上げる担ぎ手
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歯を食いしばり、だんじりを持ち上げる担ぎ手
本宮の夜、境内で回転する住之江区のだんじり=本住吉神社
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本宮の夜、境内で回転する住之江区のだんじり=本住吉神社
練り合わせをする3基のだんじり
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練り合わせをする3基のだんじり
祭りを盛り上げる女性たち
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祭りを盛り上げる女性たち

 転勤族の家庭に育ち、地域の伝統行事とは縁遠い人生を送ってきた私にとって、祭りに闘志を燃やす人々をうらやましく思ってきた。沸き立つエネルギーはどこからくるのか。地元への愛着? それとも誇りなのか。新緑萌える5月、神戸市東灘区では、だんじりが街を駆け抜ける。取材先に選んだのは、本住吉神社(住吉宮町7)に宮入りする12地区の一つ住之江区。年に一度の晴れ舞台に賭ける“祭人”たちの2日間に密着した。(那谷享平)

 だんじりと言えば大阪府岸和田市が有名だが、東灘区も負けてはいない。区内では計32基ものだんじりが春祭りを彩る。神戸市教育委員会が1975年に発行した「神戸の民俗芸能 東灘編」によると、少なくとも江戸後期には同神社で行われていたとの記述がある。

 住之江区のだんじりは高さ約4メートル、幅約2・5メートル、奥行き約7メートルで、精巧な竜虎の装飾が自慢だ。先代のだんじりが戦災で焼失し、1947年に購入したという。来年、だんじりを72年ぶりに新調するため、今回で見納めとなる。下調べはこのくらいにして、いざ祭りへ。

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 宵宮の5月4日午前9時過ぎ、境内には白い法被を着た住之江区の住民たちが集まっていた。皆、茶や金に染めた散髪したての頭で気合十分。既に屋根には踊り手たちが乗り込み、宮出しの時を待っている。

 各地区が順番に出発し、いよいよ住之江区の出番。「チャーン」「チャーン」。鐘を合図に太鼓の音が激しさを増し、屋根の踊り手たちが一斉に踊り出す。太鼓や釣り鐘が刻むリズムは地域ごとに違うといい、いったん演奏が始まれば、巡行中にやむことはほとんどないという。

 鳥居の下すれすれをくぐり、だんじりが街へ。先導役は若い女性たち。かつては女人禁制とされていたが、近年は多くの若い女性たちが巡行に積極的に参加しており、だんじりに乗るのも珍しくないようだ。

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 街練りの見せ場の一つが他地区との練り合い。夕方には阪神住吉駅前の交差点に住之江区を含む4基のだんじりが集結した。それぞれの担ぎ手が「しゃんとーせー」の掛け声で競うようにだんじりの前方を持ち上げる。にぎやかなはやしが通過する電車の音をかき消した。

 「“肩入れ”しているところちゃんと見た?」と帳頭(だんじりの総責任者)室屋雅洋さん(46)。聞くと、棒鼻(担ぎ棒)を肩で押し上げ、前輪を浮かせたままの状態を保つことらしい。だんじりの転回や場の盛り上げなどの際に行う。約3トンの重量に加え、数十人が乗った車体を支える担ぎ手の肩は、内出血を起こすのだという。

 「重たい物をどこよりも長時間掲げる。それが地域の意地や団結力。自分らが一番やと見せなあかん」と力を込める住之江区の人たち。言葉通り、初日の宮入りでは、だんじりの前輪を浮かせたまま、後輪を軸に20分以上回転させた。担ぎ手らは「明日はもっと大勢が乗るし、もっと長く回る」と意気込んだ。

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 前日の言葉を疑いつつ、5日夜、再び同神社を訪れた。「とばせ、とばせ」のはやしが響き、境内にだんじりが駆け込む。

 車体が傾き、旋回を始めた。観客も一緒に「おしたー、おしたー!」の大合唱。10分、20分、30分…。回転軸の後輪は下半分が地面に埋まっているが、回るペースは一定のまま。担ぎ手が歯を食いしばり、照明に汗が光る。年長者は安全を確保するため、厳しい表情でだんじりの動きを見極めている。屋根の踊り手たちがいっそう激しく舞う。はやしに乗せ、子どもたちも楽しげに体を揺らす。

 だんじりはさらに熱を帯び、祭りの高揚感は最高に。すっかりかれた声で帳頭が叫んだ。「歴史に残る祭りや!」。

 こうして祭りのリズムが体に染みつき、伝統が続いていくのだろう。地域の心意気を目で、心で、体で感じた2日間だった。

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