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慰霊碑に追加された名前をなぞる中丸博美さん=大倉山公園(撮影・大森 武)
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慰霊碑に追加された名前をなぞる中丸博美さん=大倉山公園(撮影・大森 武)
献花を終えた荻野静子さん(左から3人目)と、車いすを押す大形由美子さん=大倉山公園(撮影・大森 武)
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献花を終えた荻野静子さん(左から3人目)と、車いすを押す大形由美子さん=大倉山公園(撮影・大森 武)
銘板に追加された父の名前をなぞる(左から)中丸博美さん、長女小川愛美さん、妹中島静代さん=神戸市中央区楠町7、大倉山公園(撮影・大森 武)
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銘板に追加された父の名前をなぞる(左から)中丸博美さん、長女小川愛美さん、妹中島静代さん=神戸市中央区楠町7、大倉山公園(撮影・大森 武)

 愛する肉親や親友が生きた証しができた-。大倉山公園(神戸市中央区楠町7)の神戸空襲の慰霊碑前で3日に開かれた刻銘追加式。73年前、無念にも命を奪われた32人の名前が新たに加わり、各地から参列した遺族らは在りし日の姿に思いをはせた。刻まれた名前をそっと手でなぞり、空を見上げる。再びなぞり、涙をぬぐう。一つ一つの名前には犠牲者を悼み、平和を願う心が託されている。(上田勇紀、竹本拓也、真鍋 愛)

■「父の居場所できうれしい」中丸博美さん

 「父は根っからの神戸っ子だった。名前が刻まれ、居場所ができたことが本当にうれしくて」

 父の山田忠雄さん=当時(39)=を空襲で亡くした中丸博美さん(83)=山口県=は3日、長女の小川愛美さん(55)=東京都、妹の中島静代さん(75)=広島県=と何度も銘板に触れ、声を掛けた。

 父は兵庫区で生まれ、神戸大で学び、神戸市役所に入った。父を残し、一家が山口県へ縁故疎開していた1945年5月11日、執務中の灘区役所で爆撃を受け、職員ら30人以上と共に亡くなったという。中丸さんは小学5年だった。

 父の最期につながるものを求め、親族らは約40年前、神戸や京都の共同墓地を探し回るなどしたが、手掛かりは見つからなかった。2015年夏、父の話題になった際、帰省した中丸さんの次男がインターネット上で「神戸空襲を記録する会」を見つけた。翌年、71年ぶりに神戸を訪れ、3世代で慰霊祭に参列。「親孝行になれば」との思いもあり、刻銘を申し出た。

 中丸さん自身も焼夷弾の恐怖を覚えている。「防空壕から必死で会下山へ逃げた。本当に雨やあられのようだった」。

 当時2歳だった中島さんは母から受け継いだ父の給料袋と写真を大切にしている。「父は写真の中の人だったが、刻まれた名前を見て『私の父だ』と再認識した」とつぶやいた。

   ◇   ◇   ◇

■「義弟の生きた証し刻まれた」荻野静子さん

 兵庫区の荻野静子さん(81)は、1945年6月5日に須磨区で空襲に遭い、わずか6歳で犠牲になった義理の弟・昇さんの名前を刻んだ。静子さんの夫豊さん=2016年に84歳で死去=はあの日、大やけどを負った昇さんを抱いて救護所に運んだが、手遅れだった。「主人はその時のことが死ぬまで心残りだったと思う。生きた証しが刻まれ、どれだけうれしがっているやろ」と涙ぐんだ。

 「お兄ちゃん、熱い、熱い」。73年前、豊さんの腕の中で、昇さんはそう叫んだという。

 須磨区の自宅から、救護所になっていた須磨寺付近まで必死に駆け付けたが、「もうあかんで」。救護所の人に告げられた。夜になり、昇さんは息を引き取った。

 弟を失った豊さんは生前、多くを語らなかった。テレビで「火垂るの墓」が放送されるたび、めったに見せない涙をこぼして悲しんだ。神戸空襲の慰霊碑のことは知らないまま、帰らぬ人となった。

 昨年、長女の大形由美子さん(56)が行政の広報で刻銘追加を知り、申し込んだ。3日、由美子さんに車いすを押されて慰霊碑の名前に触れた静子さんは、「感無量です」。由美子さんも「お父さんにしっかり報告したい」と、涙をぬぐった。

   ◇   ◇   ◇

■「繰り返してはいけない」追悼の遺族ら

 明石市の男性(79)は今回、空襲当時に長田区に住んでいた伯母の名前が追加され、娘2人と初めて参列した。「仏壇を守りたい」と疎開せず、1人だけ自宅に残り続けた伯母。避難場所として指定されていた防空壕とは別方向へ続く道路の中央で倒れていた、と父親から聞かされた。

 米軍の爆撃で神戸の街が炎に包まれた光景を今も鮮明に覚えている。「どんなに時間がたっても戦争は後に引きずる。決して繰り返してはいけない」ときっぱりと語った。

 灘区神前町の西本妙子さん(79)は5年ぶりに参列した。2013年に慰霊碑が建立された際、死別した夫の祖母と妹の名前を刻んでもらった。

 空襲で家族を亡くしたと打ち明けられたのは、結婚後。夫は2人の亡くなった経緯が分からないことを気に留めたまま、04年に他界した。その遺志をくんだ西本さんが刻銘を決めた。慰霊碑に花をたむけ「久しぶりに追悼できて気持ちがほっとした」と静かに話した。

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