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夫婦二人三脚で半世紀続けてきたクリーニング店に幕を閉じる若井延二さん(左)、弘子さん=Pro SHOPわかい
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夫婦二人三脚で半世紀続けてきたクリーニング店に幕を閉じる若井延二さん(左)、弘子さん=Pro SHOPわかい

 東灘区住吉本町2のクリーニング店「Pro SHOPわかい(若井ドライクリーニング)」が、55年続けた営業を6月末で終了する。店主の若井延二さん(79)の高齢化で惜しまれながら店をたたむが、衣服1着の仕上げに込めるこだわりは誰よりも強い。阪神・淡路大震災を乗り越え、妻弘子さん(77)と助け合った半世紀。しわ一つ無いシャツやブラウスを最後の顧客に手渡すまで、笑顔で店頭に立ち続ける。(久保田麻依子)

 JR住吉駅から歩いて3分ほどの同店。受付台の後ろには、引き渡しを待つ多くの服が掛けられている。壁際には、商売繁盛を願い創業時に描いてもらったという絵画も。延二さんは「お召し物を皆さまにお返しするまでは忙しいね」と目を細める。

 同店は1963年10月に創業。百貨店に卸す衣料品の生地の質や縫製の点検を担う仕事をしていた延二さんが、結婚と同時にクリーニング店を興した。業界全体の成長が著しく機械化も進んだが、婦人服などは服の形に合わせて細かいコテ(アイロン)掛けが必要といい「(三宮の)センター街を歩いているおしゃれな人が、どのあたりのクリーニング店を利用しているかが分かるほど技術が問われる仕事。プレッシャーは大きかった」と思い返す。

 2、3世代で利用するお得意さんも多く、弘子さんは顧客の顔と名前を細かく記憶する。「受け付けだけじゃなくて、世間話ができるのも毎日の楽しみ」。関東へ引っ越し後も宅配で依頼する人もいるという。

 一方で、苦難もあった。阪神・淡路大震災では、木造2階建ての店舗が全壊。何とか営業を続けようと自宅の敷地内に機械を設置し、大阪に避難しながらも注文を受けた。店舗は2年後に再開。同業者からの支援や、待ちわびた顧客からのエールが力になった。

 2人とも年を重ね、延二さんは「80歳を前にアイロンを置こう」と決意。閉店を前に受け付けたクリーニング品や長期保管の衣類を引き渡す作業が、7月まで続く。時々店を手伝う長女は「シミがきれいに落ちるまで、家に帰ってからも根気強く作業をする。いちずな面をずっと見てきました」と笑う。

 延二さんは「生地や洗剤の質も時代とともに変化するから、何年たっても勉強中。若かったらもっとできることがあったはず」と謙虚さを崩さないが、「本当に多くの人に支えられてここまでやってきました」と夫婦で顔を見合わせる。

 最終受け付けは30日午後7時。朗らかな人柄が重なる夫婦の「いらっしゃいませ」の声が、じんわりと耳に響く。

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