神戸

  • 印刷
慈憲一さん
拡大
慈憲一さん
西井利行さん
拡大
西井利行さん
永井和浩さん
拡大
永井和浩さん
森本元気さん
拡大
森本元気さん
西本一夫さん
拡大
西本一夫さん

 大規模店舗の進出で全国的に個人商店が衰退する中、神戸市灘区・水道筋が元気だ。街の縦横に八つの商店街と四つの市場。行き交う人は多く、食や音楽のイベントも日夜繰り広げられる。最近はインバウンド(訪日外国人観光客)の姿も目立つ。まちの活気の秘訣は何か-。神戸版では約1カ月にわたり、紙面特区「灘マンスリー・水道筋界隈」と題して、このまちの魅力、ここで生きる人々の暮らしぶりを伝えていく。まずは、まちづくりを先導するキーパーソン5人衆の紹介から始めたい。

■思いついたら即実行/慈憲一さん

 本業はデザイン事務所「六甲技研」の代表。“まち遊び”が目立ち過ぎ、「お仕事は何ですか」ってよく聞かれるんです(笑)。

 実家は阪神西灘駅近くの敬覚寺(灘南通5)。阪神・淡路大震災で寺は全壊した。「何かせんとやばい」と東京のデザイン事務所を辞め、帰郷した。

 約20年前に始めたフリーペーパー「ナディズム(灘主義)」やメールマガジン「ナダタマ」で、水道筋との関係ができた。今は職場も自宅も水道筋。食材は全部市場で調達している。

 灘のいい物を紹介する「灘印良品」とか、空き地で映画鑑賞会とか、思いつきを取りあえず実行するのが自分のスタンス。とがった企画は最初に「えー!?」と言われるけど、最終的に受け入れる懐の深さが、このまちの良さかもしれない。

 僕はそういう勝手連がルーツで、他の人もそれぞれやり方がある。各人の特技を生かしながら緩やかに連携しているから元気なまちなんじゃないかと思う。

 お薦めの穴場は畑原東市場のすし店「寿し豊」。昼下がりに一杯やるのが至福だ。密かな灘の楽しみ方は、摩耶ビューラインを活用した下山オンリーの山歩き。(上杉順子)

■「おもろい」企画で水道筋盛り上げ/西井利行さん

 自他ともに認める補助金マニア。高く張ったアンテナで補助金情報をキャッチして応募する。最近では行政から直接、連絡が来るほどの“上客”だ。

 そのおかげで商店街は常に「おもろい」ことを企画し続けている。アメリカンフットボールを通じたまちづくり「王子プロジェクト」のために造った「水道筋汗かき恵比寿」(水道筋3)も、それをPRするための着ぐるみも、2010年に約30年ぶりに復活した「夜店」も…。すべて補助金を活用している。

 300円均一ショップのオーナーで、元ツアーコンダクター。その手腕を発揮し、大当たりしたのが食品店や飲食店のお薦め品を食べ歩く「つまみ食いツアー」だ。会員制交流サイト(SNS)で評判が拡散し、県内外からツアー客が押し寄せる。450店以上が軒を連ねる水道筋商業地。「何でもあって、食材が安心。ここは巨大なデパ地下である」が持論だ。

 「もうネタ出えへんけどね」と笑うが、商店街の運営企画部長は立ち止まらない。「客も時代も変わる。同じ頭で考えていてもあかん」。おもろい企画で水道筋はまだまだ明るい。(坂山真里緒)

■それぞれの得意分野を大事に/永井和浩さん

 「え! 記者さんの名前も『なや』? 偶然やね。うちの店名の『な也』は、かつての店構えが納屋みたいだったのが由来でね」

 灘区での商売は3代目。妻の祖父が菓子店を始め、父の代でうどん店などに事業を拡大。自分が店を継ぎ、そば専門店も開業した。

 学生の頃から音楽が好きで、2005年から夜は店をライブハウスにしている。あくまで気の合う仲間内の活動。元々まちおこしに興味はなかった。水道筋に商店街や市場が10以上あることも知らなかった。「でも考えたら、その区分けは、お客さんに関係ないでしょう」

 07年、商店街の若手たちで顔を合わせたのがきっかけで、活性化に関わるようになった。「今では団体の枠を超え、お互いの催しを手伝っている。だって、みんな水道筋なんやから」

 水道筋で開かれるイベントは年間60以上もある。僕らの活動を見て新たに店を出す若い人もでてきたし、良い循環が生まれている。

 「僕の音楽のように、みんなそれぞれ得意分野がある。それを大事にして無理をしないことが大切。無理して始めた企画は長続きしない。これは絶対」(那谷享平)

■若い世代を呼び込む市場に/森本元気さん

 暖簾を守る。水道筋には脈々と血筋を継ぐ店がいくつもある。4代目の父と一緒に店に立つ灘中央市場の精肉店「土居商店」もその一つ。1930(昭和5)年創業で、阪神大水害や神戸空襲、阪神・淡路大震災も乗り越えてきた。

 「母のお腹にいた時からお客さんに育ててもらっている」と5代目跡継ぎの元気さん。イケメンのルックスも父譲りで、常連客にファンも多い。

 市場の店舗数は現在34。高齢店主も多く、先行きは不安だが、周辺には新しいマンションが建ち、子育て世帯の流入も進む。

 「逆転の発想。若者層が立ち寄りやすい雰囲気をつくれば、ファンは定着する」。市場のロゴマークを考えたり、土日限定のハンバーガー販売を始めたりと挑戦を続ける。今年、市場内にできた3カ所の「まちなか防災空地」も、ワークショップやイベントの開催、客のベビーカー置き場としても活用するつもりだ。

 お薦めの穴場は漬物屋「たけちょう」▽イタリアンバー「エニシバ」▽ジャマイカ料理「神戸ストンプ」。「うちと同じく、安全で高品質な食材へのこだわりがある。お客さんを裏切りません」。(村上晃宏)

■つきぬまちおこしへの/西本一夫

 午前5時前。夜勤明けの人、仕入れを終えた市場の関係者、早起きのお年寄りらが列を作り、オープンと同時に「朝風呂」になだれ込む。「冬場は待ち客が気の毒で、4時台に開けることもあります」と笑う。

 水道筋で唯一の銭湯、いや温泉だ。1930年代初めに祖父が創業した。38年の阪神大水害で流され、現在の場所に移った。阪神・淡路大震災で半壊したが、「被災者のために」と約1カ月後に営業を再開した。

 まちおこしへのアイデアはつきない。商店主らと1・4キロメートルの手巻きずしを作るイベントを催したり、銭湯を大人と子どもの交流の場にしようと地域の小学生が大人の背中を洗う「お背中流し隊」を結成したり。

 極め付きは、玄関横にある「さすり観音」だ。温泉水を掛け、自分の体で悪い部分をさすると治るという。「待てよ。どこかで聞いたことが…」。東京・巣鴨の「洗い観音」を参考にしたという。

 昨今の登山ブーム。土日になると大きなリュックサックを持ったハイカーの姿が目立つ。「六甲山の登山帰りのポイントにもなっているようで…」と、次なる戦略を練る。(西竹唯太朗)

神戸の最新
もっと見る

天気(7月18日)

  • 35℃
  • 28℃
  • 20%

  • 35℃
  • 25℃
  • 20%

  • 37℃
  • 28℃
  • 20%

  • 38℃
  • 27℃
  • 20%

お知らせ