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回収された空き瓶1本1本に注がれるアップル。その工程を秋田健次さんが見守る=兵庫鉱泉所
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回収された空き瓶1本1本に注がれるアップル。その工程を秋田健次さんが見守る=兵庫鉱泉所
できたてのアップル=兵庫鉱泉所
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できたてのアップル=兵庫鉱泉所

 路地を歩く。お好み焼き店のソースの匂いに誘われ店内へ。ラベルのないガラス瓶に入った黄色の飲料水が気になった。60年余り愛され続けるロングセラー「アップル」。中身はりんご水ではなく、なぜかみかん水だ。「こなもんのお供に、お風呂上がりに、この1本」。こんなキャッチフレーズが聞こえてきそうなくらい、兵庫県神戸市長田区内のお好み焼き店や銭湯には大抵置いてある。時代は変わっても、昭和の風情を色濃くとどめるアップルの製造工場へ向かった。

 「兵庫鉱泉所」(同区菅原通1)。サイダーやラムネなど瓶詰めの清涼飲料水を製造・販売する。うちアップルは年間約15万本作られ、長田、兵庫区を中心に出荷されている。

 瓶に詰めて売って、空き瓶を回収。洗浄して、また詰め直す。廃業した同業者から譲り受けた瓶もあり、形もばらばら。1945~55年ごろの瓶も約200本残っている。代表の秋田健次さん(61)は「父から受け継いだこのやり方を守ってきたから、今がある」と力を込める。

 同社の創業は1952年。当時は周辺に瓶詰めの清涼飲料水を作る業者がたくさん集まっていた。缶飲料やペットボトルの普及で需要は大きく落ち込み、同業者は相次いで廃業した。阪神・淡路大震災では、得意先だった多くの店舗が姿を消した。気付いてみれば、市内で兵庫鉱泉所のみとなった。

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 水に砂糖やみかん風味の香料などを入れるだけのシンプルなみかん水。なんで「アップル」と呼ぶのか?

 「ハイカラな神戸に合うよう英語のネーミングにしようとしたら、既に『オレンジジュース』は別の商品に使われていた。だからアップルになった、と聞いたことがある」と秋田さん。「でも…」と続ける。「真相はよう分からんのや」

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 次から次へと製造ラインに瓶が流れ、1本1本にアップルが注がれている。その様子を近くで秋田さんが見守る。

 「子どもたちも就職したし、私がやめたら終わってしまう」と口にしながらも、「息子はアップルを大切な庶民文化だと言ってくれた。定年ないしね。下町潤すこの伝統の味を守っていくため、まだまだ頑張るで」

(吉田みなみ)

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