市役所本庁舎(中央区加納町6)の再整備に伴い、隣接する東遊園地内に暫定的に移される「こうべ花時計」。29日に開かれた移転セレモニーで、久元喜造市長らによってその秒針が止められた。日本最初の花時計として1957年から時を刻み、遊びやデートの待ち合わせ場所として親しまれた神戸のランドマーク。来年3月の仮移転完了までしばしのお別れを告げようと、県内外の人たちが足を運んだ。(末吉佳希)
「神戸で遊んだ日の最後は、花時計に手を振ってお別れしました」。会員制交流サイト(SNS)で移転を知り、母親の野口恒子さん(83)とともに駆けつけた松井和美さん(54)=大阪市=はそう懐かしむ。
小学生の時に初めて目にして以来、「圧倒的な存在感があり、見るといつも心が躍った」と松井さん。野口さんは「花時計は今も昔も変わらないが、その後ろで大きく成長したクスノキに時の流れを感じる」と感慨深げに話した。
西区から訪れた川村佑輔さん(72)は「苦しい時に花をめでたら、疲れが和らいだ」と振り返る。阪神・淡路大震災直後、三宮の地下街の復旧工事に奔走。心身の疲れで足元ばかりに目が行くようになったころ、見上げた先に花時計を見つけ、「力強く咲き誇る花々に力が湧いた」という。
岡山県の主婦森川旦子さん(64)は「神戸遊びの一日は花時計から」。この日も花時計前で奈良の友人と待ち合わせした。季節ごとに変化する花の色合いが楽しみだったといい、「すてきな花の前で待つと、映画のワンシーンを演じているようでした」と笑った。
花時計の花壇部分は1、2カ月に1回植え替えられ、バラをかたどった505回目のデザインが最後となった。撤去工事は来月3日から始まり、来年3月に約500メートル海側の東遊園地南端に仮移転する。最終的な移転地は未定。
