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「灘区の銭湯」をテーマに卒業論文を書いた竹中信乃さん(右)と、元銭湯経営者として協力した祖母の中村宣子さん=神戸市灘区
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「灘区の銭湯」をテーマに卒業論文を書いた竹中信乃さん(右)と、元銭湯経営者として協力した祖母の中村宣子さん=神戸市灘区

 神戸市灘区出身の東大生が、地元の銭湯をテーマに卒業論文を書き上げた。祖父母が銭湯を経営し、番台は子どもの頃の遊び場。その店は数年前にのれんを下ろし、同業者も高齢化や燃料費の高騰で減少の一途だが「銭湯に通うのは高齢者ばかりという固定観念を打ち破り、ポテンシャル(潜在能力)の高さを示したい」と、祖母の協力を仰ぎながら逆説の提示に挑んだ。

 東京大工学部建築学科4年の竹中信乃さん(22)=東京都文京区。灘区で育ち、甲南女子高校(東灘区)から東大に進んだ。

 親が共働きだったため、小学校が終わると母方の祖父母が切り盛りする灘区上野通3の銭湯「五毛温泉」へ。番台に立ち、浴槽に入浴剤を入れて手伝い、湯船にも毎日漬かった。

 銭湯は竹中さんが中学3年生になった2011年、客の減少や施設の老朽化などが重なり廃業した。経営していた祖父の中村貞雄さんは2年前に82歳で亡くなり、祖母宣子さん(78)は実家近くに住む。

 竹中さんは2年前、リポートで祖父母の仕事に触れたことをきっかけに、指導教官から「卒業研究にしては」と勧められた。「従来の銭湯研究は毎日来る近所の高齢者を調査し、新たな活用法の提案も高齢者施設など、銭湯はお年寄り向けの施設というイメージが強い。果たして本当にそうなのだろうか」。素朴な疑問を起点に今春以降、帰省を利用して調査を進めた。

 まずツイッターで「五毛温泉」と検索し、どういう文脈で言及されたか調査。その結果、約40件のうち1割が登山帰りだと分かった。並行して宣子さんの紹介で元常連14人にインタビュー。「大きなリュックサックを背負ったグループがいた」などの証言も得て、観光の一部として利用する若者の存在が裏付けられた。

 また、1970年以降に営業していた区内46軒をマッピングし、住民の高齢化率を表す地図と重ねた。90年時点では約7割の銭湯が高齢者が多い地域にあったが、95年の阪神・淡路大震災発生後は関連性が薄く、逆に、今も残る5軒は平均より高齢化した地域にはないことが分かった。「灘区では近くのお年寄りが利用する構図は見られなくなっている」と竹中さん。

 「若者の時々の利用も重なれば、家にお風呂がない人のインフラを支えることにつながる」と指摘。観光との相性にも着目し、「ゲストハウスなど、交流を求める人が集まる場として可能性がある。銭湯があるからこそできる暮らしを提案したい」とする。

 こうした内容についてまとめた論文を昨年11月、「五毛温泉から見た銭湯論」として提出。今春には大学院に進む。銭湯研究の継続は未定だが、「銭湯は心身ともにくつろげる大好きな場所。卒論の経験を生かし、建築の勉強を続けたい」と話す。(上杉順子)

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