神戸

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千葉と東京を結んでいた京成電鉄の「なっぱ電車」(鉄道フォーラム提供)
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千葉と東京を結んでいた京成電鉄の「なっぱ電車」(鉄道フォーラム提供)
野菜を積んだ台車を押す竹下友里絵さん(右)、農家の山崎高志さん(中央)ら=西神中央駅
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野菜を積んだ台車を押す竹下友里絵さん(右)、農家の山崎高志さん(中央)ら=西神中央駅
電車の中に野菜? 不思議な光景に乗客はくぎ付けだった
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電車の中に野菜? 不思議な光景に乗客はくぎ付けだった

 かつて日本中を行き交っていた、魚や野菜を運ぶ行商列車。だがモータリゼーションの波に押され、令和の時代を迎えた今、残るのは近鉄の鮮魚列車1編成だけで、野菜は皆無だ。そんな中、神戸市営地下鉄で今春、平日昼間の電車を使い、幻の光景が1日限りで再現された。採れたてのニンジンやホウレン草が詰まった台車で乗り込んだのは、23歳の「八百屋女子」。農産物の物流に一石を投じようという、夢の挑戦を取材した。(広畑千春)

 神戸大農学部4年生の時に青果店「タベモノガタリ」(北区淡河町)を創業した竹下友里絵さん。ほんの小さな虫食いや形が左右非対称というだけで、大量の野菜が「規格外」として廃棄される現状を知り、「規格自体をなくし、本当に新鮮でおいしい野菜を消費者に届けたい」と力を込める。近郊の20軒ほどの農家と契約し、無農薬・省農薬の野菜にこだわり、地下鉄の駅や催しで販売する。

 竹下さんが乗り込んだのは、西神・山手線西神中央駅。西区内の畑で野菜を収穫し、それを入れたコンテナ8個を台車に積んで車内へ。縦、横、奥行きの3辺の合計が2・5メートル以内、重さ30キロ以内という手荷物ぎりぎりの大きさだった。

 途中、「まあ、野菜?」と声を掛けられたり、不思議そうな乗客の視線を浴びたりしながら、約30分。県庁前駅に到着し、構内に仮設売り場を設けると、主婦や公務員らが次々と買い求めた。80代の女性は「葉付きのニンジンが好きだけど、スーパーでは売ってなくて」と大喜び。「土や形がいびつ? そんなの全然気にならないし、むしろ新鮮な証し」と笑顔を見せた。

     ◇

 西区では、高齢化の一方で、若手を中心に農薬や化学肥料を極力使わないか、全く使わない野菜や米作りに取り組む農家が増えている。飲食店との直接契約や直売所のほか、三宮や大阪などで催しを開くこともあるが、壁になるのが運送費だ。ある農家は「配送料も値上がりし、自前で運ぶにも人件費や交通費の方が高くつく。多少規格が厳しくても、従来の流通ルートの方が楽なのは事実」と打ち明ける。

 一方の市営地下鉄は1977年に開業し、1日平均輸送人員は約31万人。だが、沿線には街開きから30年以上経過し、急激な高齢化で「オールドニュータウン」化に悩む街区も少なくない。空洞化が心配される中、若い世代にアピールできるような駅周辺の活性化が課題になっていた。

 そんな中、竹下さんから持ちかけられたのが、平日昼間のオフピーク時に野菜を運ぶ今回の企画だった。

 「産地と消費地が近い神戸の利点を生かしつつ、二酸化炭素排出量の少ない輸送方法として、地下鉄を見直してもらうきっかけになれば」と市交通局。一方、農家側は最寄り駅に野菜を届ければ済む。駅から約2キロに畑を持つ農家の男性(38)は「駅までなら時間も手間もかからない。地元にある産地のアピールにもなる」と歓迎する。

 神戸でまさかの行商専用列車復活か? それなら2013年に運行を終了した京成電鉄(本社・千葉県市川市)の通称「なっぱ電車」以来では-と、最近少し鉄分多めの記者は意気込んだが、「現在は人の輸送が主目的なので、イベント限定です」と市交通局。ただ、今年2月に導入した新型車両6000系には全車両に車いすやベビーカー利用客を想定したフリースペースがあり、「全編成が新型に置き換わる5~6年後には、時間を区切って荷物を運べなくはありません」。

 実際に運用するなら、運賃や受け渡しの方法をどうするか-など、ハードルは多いというが、いつの日か電車で野菜を運ぶ光景が見られるかもしれない。

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