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命の危険が迫った患者に必死で処置を施す医師の建部将夫さん=23日午後、神戸市中央区、中央市民病院
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命の危険が迫った患者に必死で処置を施す医師の建部将夫さん=23日午後、神戸市中央区、中央市民病院
同僚と情報交換する看護師の酒井美樹さん(左)=25日午前、神戸市中央区、中央市民病院
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同僚と情報交換する看護師の酒井美樹さん(左)=25日午前、神戸市中央区、中央市民病院
密着した建部さんと記者=神戸市中央区、中央市民病院
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密着した建部さんと記者=神戸市中央区、中央市民病院

 神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)の救命救急センターは、市民の命を守る最後の砦だ。日々多数の重篤患者を受け入れる一方で、「断らない救急」を理念に掲げ、軽症患者も原則拒否しない。厚労省による評価は、全国の同種施設289カ所で5年連続1位。ただ揺るぎない地位を築いているこのセンターが、若いスタッフによって支えられていることはあまり知られていない。5月下旬、救命現場で闘う若手医師と看護師に密着した。(霍見真一郎)

 「あーっ、あーっ」

 23日午後4時すぎ。苦しそうな声を上げる70代男性のベッドを医師や看護師計8人が囲む。「アカ(赤血球)10単位、血小板10単位」。白血病の病歴を持つこの男性は、血中ヘモグロビン値が極めて低く、輸血が急がれた。

 「急性出血だったら死亡してもおかしくないくらい危険な状態」。次々に管を入れて注射器で強制的に血液を流し込む。輸血ルートを複数確保しようと格闘する医師らは、誰も声を荒らげないが声音は堅い。男性は大量の輸血が功を奏し一命を取り留めた。

 処置の中心にいたのが医師5年目の建部将夫さん(32)。神戸大農学部から大学院に進んだ後、医学部に学士編入した異色の経歴を持つ。同センターには24人の医師がいるが、20代、30代が計19人を占める。

 密着したのは日勤帯。医師1年目の研修医らをカバーしつつ、息苦しさを訴える高齢男性の胸にたまった水を、管を差し込んで抜いたり、鼻血が止まらない中年男性の血止めをしたりと座る暇もない。

 「蘇生できないこともあります。処置を優先したため、患者が最後の言葉を交わしたのが家族ではなく僕と看護師だったことも。尿や痰なども扱う泥臭い仕事ですが、誰かのためになったと思えることがやりがいになっています」。淡々とした口調に、建部さんの覚悟の重さがにじむ。

 ■トリアージ

 24日午後4時から翌日午前9時の夜勤帯に密着させてもらった看護師の酒井美樹さん(27)はこの日、治療の優先度を決めるトリアージ担当だった。次々と来院する患者から症状を聞き取り判断する。患者の訴えの強さだけでなく、意識されていない重篤な症状がないか見極める。待っている患者がなくなればすぐに扉の中に入り、ベッドを回り救命措置を介助する。

 午後10時ごろだった。飲み屋で突然後ろにひっくり返った男性が救急車で運ばれてきた。ところが酔った男性は大声で暴れ、血圧さえ測らせない。警備員を呼び、ほかの看護師と協力して測る。

 「なぜあの患者を丁重に扱うのか」。痛みに耐え、診察を待つほかの患者から苦情が出る。酒井さんは「ごめんなさい」と頭を下げた。「断らない救急」の現場を見た気がした。「さまざまな感情が生まれるが、前面に出さないように心掛けています。しんどい患者さんに見せない方がいいから」

 ■チーム医療

 処置の介助に入っていたベッドのカーテンが荒々しく引き明けられたのは午前6時半。赤ちゃんの小さな体が「びくびくっ」とけいれんしている。

 「サンソ、サンソ」

 酒井さんの声に即座に7人が集まり支える。命を救いたいという一心で動く人々の姿に、鼻の奥がつんとする。一方、空き時間には、眠る高齢男性が脱ぎ忘れた靴下を取ったり、使用後のシーツを取り換え、手すりを消毒したりする。仮眠を含め、この日の執務は17時間に及んだ。

 医師が医療行為という骨格を描き、余白を看護師らが丁寧に色を塗る。その面的なチーム医療が、命を救う。そして専門的医療を行う各診療科につないでいく。答えのない現場で、スタッフは指示に頼らず主体的に動く。有吉孝一救命救急センター長は「自分が何ができるかより、何ができないか見極めることが大事」と話す。今日もセンターでは、若い医師や看護師が必死で命をつないでいる。

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