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実がよく育ち、先端が柳のように垂れ下がった穂=神戸市北区大沢町中大沢
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実がよく育ち、先端が柳のように垂れ下がった穂=神戸市北区大沢町中大沢
酒造会社などを招いた山田錦の産地ツアー=神戸市北区大沢町中大沢
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酒造会社などを招いた山田錦の産地ツアー=神戸市北区大沢町中大沢
まもなく収穫を迎える山田錦の稲穂。大粒でタンパク質が少ないことなど、酒造りに適した条件がそろう=神戸市北区大沢町中大沢
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まもなく収穫を迎える山田錦の稲穂。大粒でタンパク質が少ないことなど、酒造りに適した条件がそろう=神戸市北区大沢町中大沢

 豊穣の秋。車で郊外を走れば、黄金色の稲穂が頭を垂れる風景が広がる。神戸市北区のコメ作りを語る上で、忘れることができないのが「酒米の王様・山田錦」だ。同市内では同区のみで栽培され、「特A地区」の誉れを受けるほ場も。「酒米買うなら土地を見て買え」という格言も残るほど、良質の山田錦栽培には「土の力」が欠かせない。大地の力を引き出す農家やJAの取り組みを取材した。(伊田雄馬)

 今月2日午後、北区大沢町中大沢で山田錦を生産する坂井正和さん(62)のほ場に産地見学ツアーの参加者を乗せたバスが到着した。降りてきたのは、今年の日本酒コンテストで上位に輝いた全国17社の酒造会社の杜氏や経営者らだ。

 「稲の高さ、力強さが全く違う。収穫前からすでに『王者の風格』を感じる」と感動するのは、仙台市で12代続く酒蔵「勝山」の伊澤平蔵社長。「世界で戦える日本酒づくりに山田錦は欠かせない」と言い切り、坂井さんの言葉に深く耳を傾けた。

   □   □

 山田錦は1936年、兵庫県立農事試験場(県立農林水産技術総合センター)で生まれ、雑味の原因となるタンパク質の少なさや粒の大きさ、コメの中心部にある「心白」と呼ばれる部分が適度な大きさであることなど、酒造りに適した特徴を有する。北区は昼夜の寒暖差が大きく、粘質がかった土壌を持つ栽培の適地。JA兵庫六甲によると、約450人が357ヘクタールで生産しているという。

 誕生から80年以上たつ山田錦だが、生産者泣かせのコメでもある。背が高く実が大きいため、稲が倒れやすく、品質低下のリスクを伴うからだ。同JAの営農相談員岡野良寛さん(41)は「コメが地面に触れて発芽すれば、品質は極端に下がる」と刈り取りのタイミングに細心の注意を払う。

 坂井さんのほ場でも稲が倒れ、とぐろを巻くヘビのようにうねっていた。一刻も早く刈り取らないといけないのでは?

 私の心配をよそに、「さすが坂井さんだ」と満足そうにほ場を見つめるJAの面々。坂井さん自身も「あと10日くらいで収穫かなぁ」と笑いながら返す。その理由を岡野さんが説明してくれた。

 「見てください」と指さしたのは、ほ場の端の稲。柳のようにしなっているが、先端は地面にほとんど触れていない。「これがいい山田錦。基礎を徹底しないと、こうはならない」

 いわく、水や肥料を適切に管理しなければ根元から折れてしまったり、逆に実が詰まらずいつまでも直立したりしているという。「頭を垂れるが、倒れない」姿こそ、一流生産者の証なのだ。

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 日本酒の流行を背景に、山田錦の需要が大幅に増えたのは5年ほど前。北区でも、栽培に乗り出す米農家が相次いだ。経験が浅い農家の技術を底上げするためには、坂井さんらベテランの力が欠かせない。同JAは各地に見本となるほ場を設けて実地見学会を開催している。

 さらに、昨年からは穀粒判別器でコメを計測し、データを各農家にフィードバックし始めた。粒の重さや形、心白率など等級の根拠となるデータが客観的に分かる。

 「酒蔵に指名される産地にならなければ生き残れない。そのためには信用と品質です」と岡野さんは力を込めた。

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