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ワイン醸造士の渡辺佳津子さん=神戸市西区押部谷町高和
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ワイン醸造士の渡辺佳津子さん=神戸市西区押部谷町高和
神戸ワイナリーの長沢秀起理事長=神戸市西区押部谷町高和
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神戸ワイナリーの長沢秀起理事長=神戸市西区押部谷町高和

 「ワイナリーのジャンヌ・ダルク」。2008年、4年間の“武者修行”を終えてフランスから帰国した醸造士の渡辺佳津子(44)を人々はそう呼んだ。

 埼玉県出身。幼い頃から酒や発酵食品に興味を持ち、東京農大醸造学科へ。卒業後、株式会社神戸ワイン(現・みのりの公社、神戸市西区)に入社し、醸造に携わるようになった。経験を重ねていくうち、渡辺はある疑問を感じるようになった。

 「日本ワインの作り手は、海外のワインの味に近づくことを目指している。それでは、(日本で育った)ブドウの個性を殺してしまうのでは…」

 日本にいてもその答えが導き出せない。そう考えた渡辺は渡仏を決意し、ワインの主要産地にあるブルゴーニュ大学へ入学した。日常会話すらままならなかったフランス語を必死に学び、高度な授業についていった。難関とされるワイン醸造の国家資格「エノログ」も取得した。

 帰国後、渡辺はブドウ本来の味を生かした醸造を追求する。「それまでは濁りや沈殿などの不純物を省く工程で、うま味成分も取り除いてしまっていた。不純物を恐れるのではなく、理由をきちんと説明できることが大切だと気付いた」。

 本場仕込みの技術と神戸の農家が磨き上げたブドウが出合い、最高級ワイン「ベネディクシオン」シリーズが誕生した。今年6月、G20大阪サミットの夕食会に選ばれた「ベネディクシオン ルージュ2016年」は、ブドウの滋味がそのまま映し出され、“純国産”の存在感を見事に表現したものだった。

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 同社は品質の改良を進めつつ、過剰在庫を着実に減らしていった。ワイン用ブドウの栽培面積は02年度の約110ヘクタールから、最終的に約40ヘクタールまで削減。製造量も大幅に減らし、在庫は13年にほぼ適正量となった。

 加えて取り組んだのが海外戦略だった。輸出・輸入代行会社「グロースターズ」(同市中央区)と業務提携し、中国やマカオの商習慣に詳しい代表取締役、張宇(38)の助言を受けて、15年頃から輸出を本格化させた。

 しかし、意外にも、先に注目された商材はワインではなくブランデーだった。

 蒸留酒であるブランデーは1本作るために白ワイン7、8本を消費する。ワイナリーの立ち上げ当初、ブドウを使い切るために仕込んでいた素材が時を経て熟成し、飲み頃になっていた。張は「『(高級銘柄の)ヘネシーXOのようだ』と絶賛され、マカオでは飛ぶように売れた」と振り返る。

 「在庫処理」に近い形で出荷されたため、現地からは「安すぎて酒の相場を崩す」とクレームを入れられる始末。社員すらも価値に気付いていなかったブランデーが海外の左党をうならせた。

 たった1人だけ、このブランデーの価値を疑わなかった男がいた。神戸みのりの公社理事長の長沢秀起(61)。1988年、市の農政局(現・経済観光局農政部)からワイナリーの製造課に派遣され、ブランデー開発に携わっていた。

 「ずっと昔にまいた種が、いつしかきれいな花を咲かせていた」と長沢。ブランデーが起爆剤となり、ワインの輸出量も急激に伸びていった。(敬称略)

(伊田雄馬)

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