神戸

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神戸ワインやブランデーが並ぶ成田国際空港内の免税店(神戸みのりの公社提供)
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神戸ワインやブランデーが並ぶ成田国際空港内の免税店(神戸みのりの公社提供)
約20種のワインを求めて人が集った「新酒まつり」=神戸ワイナリー
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約20種のワインを求めて人が集った「新酒まつり」=神戸ワイナリー

 6月29日朝、神戸みのりの公社ワイン事業部長、大西省三(61)の携帯電話が鳴った。相手は日本ソムリエ協会常務理事の近藤弘康。「黙っとったけど、G20(大阪サミット)で神戸ワインを使ったで」

 各国首脳が一堂に会した前日(28日)の夕食会。赤ワインとして唯一提供されたのが「ベネディクシオン ルージュ2016年」だった。大西は6月上旬、同協会会長の田崎真也から依頼を受け、30本を納品していた。しかし、夕食会に出されるワインの銘柄は、安全保障上の理由などから秘匿され、大西にも知らされていなかった。

 「他にもいくつか銘柄があったのかと思ったら、うちだけ。本当に驚いた」と大西。夕食会のメニューが報道されると同銘柄はすぐに売り切れ、同社には全国の量販店から取り扱いの注文が殺到した。

 G20効果は、販路拡大にもつながった。

 今夏から成田国際空港内の免税店に神戸ワインが置かれるようになり、11月からはブランデーと合わせた試飲販売も始まった。

 納入を担う免税品卸売会社「ボンド商会」(神戸市兵庫区)によると、関西国際空港でも近々販売を開始する予定だという。同社の免税事業部長、岡田谷敏保(65)は「国内で生産数が少ないブランデーと一緒に売り込めるのが強み。他の主要空港へも販路を広げたい」と話す。

    □  □

 国内ワインの消費量は、2000年代前半の低迷期を越え、再び拡大傾向にある。17年は約36万キロリットルと、1998年の赤ワインブームをしのぐ高水準だ。

 神戸ワインも引き合いが増している。「実力が伴ってきた。もう『ブーム』頼みではない」(神戸ワイナリー関係者)。同公社の理事長、長沢秀起(61)が自信を見せるのが、原料ブドウの品質だ。「全国のワイナリーから『ブドウを売ってほしい』と依頼が来るようになった。以前では考えられないこと」とほほえむ。

 「土壌」「地形」「気候」。この3条件がおいしいワイン専用品種を作り出す。北海道や長野、山梨県など国内の先例地に比べ、気候が温暖な神戸は、栽培が難しいとされてきた。収穫が近づく8月に夜温が下がらず、ワインに欠かせない酸味が落ちやすいためだ。

 土を肥やし、丹念にブドウを育て、糖酸のバランスが取れたタイミングを逃さず収穫する。栽培を担当する同社製造課長の安居俊和(47)は「長い年月、経験を積み重ね、作り手が築き上げた“技”。これにより品質が格段に向上した」と説明する。

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 10月26日、市立農業公園で行われた今年の「新酒まつり」には、いつにも増して、多くの観光客が訪れた。

 「神戸ビーフに合うワインを」。第13代市長、宮崎辰雄(故人)が描いた神戸ワインの夢は、幾度の逆風を乗り越え、次代へ受け継がれてきた。そして、今、世界に羽ばたこうとしている。

 「夢に集まったいくつもの個性こそ、神戸ワインのテロワール(土地に根ざした味)では…」

 うろこ雲が広がる秋空の下、赤レンガ造りの神戸ワイナリーを見上げ、そう思った。(敬称略)

=終わり=

(伊田雄馬)

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