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(上)手製のヴィッセルのれんを掲げる3代目の初田浩子さん(下)笠松湯の外観と浴場=神戸市兵庫区笠松通6
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(上)手製のヴィッセルのれんを掲げる3代目の初田浩子さん(下)笠松湯の外観と浴場=神戸市兵庫区笠松通6
(上)2代目店主の釜須一昭さんと妻の保美さん(下)しなの外観と店内=神戸市兵庫区小松通3
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(上)2代目店主の釜須一昭さんと妻の保美さん(下)しなの外観と店内=神戸市兵庫区小松通3

 夜のとばりが降りるころ、JR和田岬駅南西にある「笠松商店街」を歩いた。サッカーJリーグ1部(J1)ヴィッセル神戸のホーム「ノエビアスタジアム神戸」のお膝元、東京五輪を目指す柔道の阿部一二三、詩選手の生家近くの商店街としても知られる。約200メートルに40店舗が軒を連ねる。気になった老舗2店を訪れた。(伊田雄馬)

 1969年開業の「生そば しなの」(神戸市兵庫区小松通3)。前身の製麺所から数えると、のれんを掲げて約80年になる。

 自慢は毎朝の打ち立てを提供するそば。鮮度にこだわった北海道産のそば粉を使いながらも、450円からと良心価格。2代目店主の釜須一昭さん(72)は「ほんまは値上げしたいけど、今更もうけようとも思えへんし…」と頭をかく。

 同商店街はかつて、三菱重工業の造船所で働く下請けの工員らでにぎわった。2012年、商船製造が幕を下ろすと、工員の姿は減っていった。

 代わって商店街が集客に力を入れ始めたのが、ヴィッセル神戸のサポーターだ。「しなの」でも座敷席の一つを「ヴィッセル仕様」にし、選手のサイン色紙や試合日程入りのポスター、記念写真、首振り人形などのグッズを飾っている。

 地元後援会の初代会長を務めた一昭さん。試合後にファンが集まれる休憩スペースの設置をチームに提案したり、商店街の夏祭りで選手と交流したりするなど盛り上げに尽力してきた。

 今や応援バナー(旗)は商店街のあちこちに掲げられ、街全体がチームカラーのクリムゾンレッドに染まりつつある。「サッカーは全然知らんかったけど、すっかりファン。試合があると仕事中もそわそわするね」と笑う。

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 白壁の外壁は「レトロ」だが、店内はもはや「ビンテージ」の領域だ。タイル張りの浴室には小判型の大きな浴槽が一つだけ。ジェットバスやサウナ、水風呂はない。笠松湯(同区笠松通6)3代目の初田浩子さんは「実は昨年、廃業を覚悟した」と打ち明ける。

 阪神・淡路大震災で被害を受け、内壁にはセメントで埋めたひびが古傷のように残る。古い設備を補修しながら営業してきたが、ついに昨春…。「風呂の湯がいきなり抜けるようになって…」。湯を循環させるろ過設備の故障と判明したが、高額の修理代見積もりを示された。

 「廃業しかない」

 初田さんはそう思い、親交のあった銭湯経営者にあいさつに行くと、「廃業なんてとんでもない」とその場で知り合いに電話し、安く修理してくれる業者を探してくれた。その結果、予想の5分の1ほどの金額で修理できたという。

 2カ月の休業期間を経て昨年7月末に営業を再開すると、常連客は「他に行くとこないねん」と大喜び。休業中に離れた客足を少しでも回復させようとツイッターでの情報発信に力を入れ、ヴィッセルの試合日には手製の「ヴィッセルのれん」を掲げる。

 「地域にはまだ、家に風呂がない高齢者がいる」と初田さん。かつて地域に大小10カ所以上あった銭湯はほぼ廃業し、笠松湯のみになった。「うちがつぶれるわけにはいかない。サポーターや銭湯ファンを大事に、店を続けていきたい」と使命感を燃やす。

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