神戸

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老舗和菓子店の3代目の船越義文さん=神戸市兵庫区塚本通5
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老舗和菓子店の3代目の船越義文さん=神戸市兵庫区塚本通5
人気のいちご大福
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人気のいちご大福
みかん(右)、はっさく大福
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みかん(右)、はっさく大福
「昭和感」漂う御旅筋の路地
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「昭和感」漂う御旅筋の路地

 「いちご大福一つ」。しばらくして訪れた別の客も「いちご大福ください」。30分くらいの間に数人がいちご大福を求め、御旅筋で80年以上続く老舗和菓子店「幸福堂」(神戸市兵庫区塚本通5)の暖簾をくぐる。

 ミカンやハッサクなど新鮮な果物が入った大福も人気を集める。

 実はこの商品、3代目店主の船越義文さん(51)が、阪神・淡路大震災後に、生き残りをかけ開発した新メニューだ。

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 震災の日、船越さんは友人とゴルフに行く予定にしていた。仕込みを済ませてから出掛けようと、午前4時半に起床し、店舗1階の調理場でかしわ餅を蒸していた。

 午前5時46分。縦揺れの後、部屋は停電で真っ暗になった。ボイラーは倒れ、餅を置く木の台が宙に浮いた。テーブルの脚にしがみついてなんとか揺れをしのいだが、1階の柱は斜めに傾き、天井が目の前に迫ってきた。「死ななかったのが不思議なくらい。怖さで体が震えるなんて初めてだった」と振り返る。

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 全壊した店舗跡地での再建を断念し、近所にあった祖父母宅の1階部分を改装し、再出発した。

 周囲では、被災により廃業する店も相次いだ。地域の核となる御旅市場も姿を消した。震災後、転居や仮設住まいで、常連客も遠のいていった。

 「このままでは立ち行かなくなる。客の心をつかむ新商品を作らなければ」

 船越さんは当時、店主だった父親と共に、オリジナル商品の開発に乗り出した。店舗で餡を生産できるよう新たな機械を購入。原料の小豆は北海道・十勝産にこだわった。新鮮な果物を納入してくれる店のめどもついた。

 こうして考案されたのが、イチゴ、ミカン、ハッサクなどを白餡と餅で包んだオリジナル大福だ。

 イチゴとミカンは丸ごと、ハッサクは1房入っているのが特徴で、口に入れた途端に果物の甘みと酸味がはじける。餅の食感と手作り白餡の甘みのバランスも絶妙で、評判は、常連客はもとより、区内外にも広がっていった。

 また、おはぎや豆大福など定番メニューにも力を入れ、丹波篠山産のもち米を直送し、自家製の餡と合わせて飽きのこない味を提供している。

 「祖父と父がつないだ味があったからこそ今がある」と船越さん。「震災を乗り越えた店と味を次世代につないでいくこと。それが私の役目かな」と力強く語った。(杉山雅崇)

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