神戸市内の高齢者が通う「神戸市シルバーカレッジ」(1993年開校)。同市北区の「しあわせの村」内にあるキャンパスでは週2日、全国最大規模の約千人の生徒たちが探究に励む。健康福祉▽国際交流・協力▽生活環境▽総合芸術-の4コースで3年間学ぶほか、クラブ活動(47団体)やボランティア活動(28団体)、毎年10月の学園祭といった課外活動も盛んだ。生きがい探しや第2の人生へのステップアップを目指し、カレッジで学ぶ生徒たちのキャンパスライフに密着し、活力の源を探った。(川崎恵莉子)
■始業
「キーンコーンカーンコーン」。午前10時半。チャイムとともに各教室で授業が始まる。
美術室ではプロの陶芸家による指導の下、総合芸術コースの2年生約30人が陶芸に熱中していた。「あちゃー」。ろくろに挑戦していた生徒が、ぐちゃぐちゃになった自分の作品を見て照れ笑い。教室内は終始、和気あいあいとした雰囲気に包まれる。
「なかなか上達しなくてね。家に持ち帰らないと完成しない」と辻本憲和さん(68)=同市垂水区。教室の隅で黙々と作業すること1時間、形になってきた湯飲みを見て満足げな表情を浮かべたが、その手と服は土まみれになっていた。
■初体験
午前11時半。調理室では生活環境コースの2年生約20人が、野菜の皮などのごみを出さないエコクッキングに取り組んでいた。これまで料理をした経験があまりなかった中井芳樹さん(67)=同市北区=は、食材調達や皿洗いを担当。「役割分担して、みんなで料理を作るのは楽しい」。作業が終わった喜びもつかの間、料理経験のある人から次の作業の指示が飛ぶ。
中井さんグループの献立は、ハンバーグやみそ汁、ご飯、白和え、スイーツ(パウンドケーキ)の5品。最後に全員でパウンドケーキの焼き上がりを見守る。中井さんは「料理をしてみて、妻への感謝や苦労を感じる。今まで体験できなかったことを学べるのがカレッジの魅力」と強調する。
■思い出話
正午。キャンパス内にある食堂に生徒たちが集まる。辻本さんは同じコースの仲間4人と食卓を囲んだ。いずれもカレッジで初めて知り合った人たちだ。
食事をしながら、自分たちの思い出話が始まると、生き生きした表情で語る。ご飯を食べて英気を養った後、午後の授業へと赴く。
■年末年始返上
午後の授業後、辻本さんは情報誌「爽風」を発行する委員会の会議に出席し、1月に発行する第200号についての進捗状況をメンバー約20人と話し合った。
放課後などに行われるクラブやボランティア活動とは別の委員会活動の一つ。情報誌作りは、各授業や発表会の様子を紹介する記事の執筆、講義する先生へのインタビュー、写真、レイアウト…など、最もハードな活動だ。「年末年始を返上しての編集作業になる」と辻本さんは説明する。
会社員時代、システム関連会社の広報担当者として働いた辻本さん。社内報の作成経験や情報を処理する能力は、現在の委員会活動に生かされていると感じている。「新しい趣味や友達ができて毎日充実している。キャンパスに週5日来る時もある」と生き生きとした表情を見せた。
■午後5時
下校時間を迎え、生徒たちが帰宅の途につく。スクールのモットー「再び学んで他のために」を実践する生徒たちの姿を取材で垣間見た。
「人生100年時代。まだまだ現役。若い人に負けてられへん」。そんな声が聞こえた気がした。
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2020年度入学生を募集中
神戸市シルバーカレッジは、2020年度の入学生を募っている。健康福祉、国際交流・協力、生活環境の3コースは、定員各100人。総合芸術コースは、美術・工芸▽音楽文化▽園芸▽食文化-の4専攻に分かれ、定員各35人。入学希望者は各区役所などにある願書を1月31日までに事務局に郵送か持参する。
神戸市内在住で57歳以上。学歴や経歴は問わない。受講料は年額7万円(総合芸術コースは7万7千円)で、実習などの経費は別途実費負担。授業日数は年間60日。同カレッジ事務局TEL078・743・8100
