コロナ禍の終息を願うとともに災害への備えを意識してもらおうと、兵庫県姫路市の「田中マッチ」が、いずれも悪疫退散のご利益があると伝わる妖怪「アマビエ」と頭が二つある鳥「ヨゲンノトリ」を箱に表現したマッチセットを発売した。デザインは同市出身の創作アーティスト、モリチエコさんが担当。「インテリアで飾ってもかわいい」と評判を呼んでいる。(広畑千春)
ヨゲンノトリは山梨県立博物館所蔵の江戸時代の文献に描かれ、アマビエとともにコロナ禍で脚光を浴びている。「何百年も前の人の絵とは思えない絶妙の緩さ。見た途端に一目ぼれした」とモリさん。外出自粛中の子どもと粘土遊びした際、ヨゲンノトリのお守りを作って知人にプレゼントしたところ、話題になり、テレビ番組で紹介された。
さらに「レトロ感がマッチにぴったり」と同社に商品化を提案。田中憲司社長は「この大変な時期に何か役立ちたいと思っていた。厳しいが、利益は言っていられない」と応じた。
通常の最小受注量よりも大幅に少ない300個を試作。ろうそくとシールを添えてSNS(会員制交流サイト)で販売すると即完売し、6月末までに500個を追加生産した。
マッチは湿気を防げば100年は保存でき、ろうそくは1個で4時間持つ。田中社長の元には以前、東日本大震災で被災した女子中学生から「ろうそくを頼りに家族で肩を寄せ合った。明かりの大切さを知りました」というメールが届いたことがある。「家庭からマッチが姿を消し、若い人や子どもが使い方も知らなくなった今こそ、家族や友人同士で楽しみながら備えてほしい」と話す。
マッチとろうそく各5個とシールのセットで税込み1650円。限定100セット。日本燐寸工業会直営店「マッチ棒」(神戸市中央区、北野工房のまち内)や、同店のインターネット通販で買える。マッチ棒TEL078・221・5561
