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時計2020/11/8 05:30神戸新聞NEXT

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改築後の三星堂(「三星堂100年史」より)
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改築後の三星堂(「三星堂100年史」より)
「ここで働けることがとても誇らしかった」と会員制の頃を振り返る笹川智子さん=神戸市中央区山本通2、にしむら珈琲北野坂店
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「ここで働けることがとても誇らしかった」と会員制の頃を振り返る笹川智子さん=神戸市中央区山本通2、にしむら珈琲北野坂店
北野坂店の鍵型の会員証
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北野坂店の鍵型の会員証

 コーヒーと喫茶店は、港町によく似合う。それは、開港とともに開けた神戸の元町・三宮を語るには欠かせないモダン文化の一つ。コーヒーの一大生産地・ブラジルへの移民の窓口だったことも、見逃せない。神戸でフリーペーパー「甘苦(あまにが)一滴」を発行する田中慶一さん(45)の案内で、“薫る街”へと旅に出た。

 東京・銀座をぶらつくのは「銀ブラ」。戦前の神戸のモダンボーイ&ガールは元町を「元ブラ」した。

 散歩につきものなのは、喫茶店。名高い店の一つが6丁目にあった、「三星堂ソーダファウンテン」だ。

 神戸のコーヒーライター田中慶一さん(45)は「豪華な外観で、文化人が集まっていたそう。残っていないのが惜しまれる」と話す。

 三星堂(現メディセオ)は、1898(明治31)年創業の医薬品会社。銀座の資生堂にならって、欧米の薬局にあるソーダファウンテンを1923(大正12)年に店の一角に設けた。

 「日によってはつめかけるお客がさばききれず、元町通に椅子を出して応接するほど」(「三星堂100年史」)の人気ぶりで、翌年の改築により2階全体に拡張すると、若い芸術家のたまり場となった。

 理由の一つはポットでのサービス。懐が乏しくても4人で2人分を分け合い、長居をすることができた。映画ファンの集まりの場にもなり、淀川長治は常連。詩人の竹中郁も学生時代によく通ったというが、戦時統制でやむなく閉店した。

  ◇   ◇

 戦後、文化人に愛されたのは、「にしむら珈琲(コーヒー)店」(48年創業)が74年に開店した北野坂店。本邦初という会員制の喫茶店だ。

 同店によると、中山手通の本店と三宮センター街店(閉店)が人気で、常連がゆっくり過ごせなくなったため、創業者の故・川瀬喜代子さんの自宅1階を会員制の支店とした。入会金は1万円。紹介がないと入会できず、市民の憧れだったという。

 阪神・淡路大震災で5店が被災し、北野坂店が「仮本店」になるまで会員制は続いた。当時を知る唯一のスタッフ笹川智子さん(66)によると、窓はすりガラスでクロークがあり、ホテルのような出迎えだった。

 「失礼のないよう、会員の特徴をノートに書いていたが、必死に話をつなぎながら名前を思い出すこともよくあった」とほほ笑む。

 5280人に達した会員リストは圧巻だ。芸能人では黒柳徹子さん、美輪明宏さんに大竹しのぶさん…。松下幸之助、中内功といった経済界のトップの名前も並ぶ。

 同店の歴史をつづる「神戸っ子の応接間」にはこんなメッセージが。〈40年前の級友2人とこの店で語り合いました〉(遠藤周作)、〈神戸に来ると、にしむらさんでぼんやりしてたいと思うの〉(杉村春子)。

 かぐわしい一杯と快適な空間は、昔も今も、人々を引き付ける。(小谷千穂)

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