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布引山で「毎朝登山」を続ける吉野宏さん=神戸市中央区葺合町
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布引山で「毎朝登山」を続ける吉野宏さん=神戸市中央区葺合町
市街地を一望できるみはらし展望台=神戸市中央区葺合町
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市街地を一望できるみはらし展望台=神戸市中央区葺合町

 新神戸駅(神戸市中央区)の北、葺合町にある布引山で、時計の針を明治時代に巻き戻す。

 ニッカーボッカーにハンチング帽の“異人さん”がつえを手に、早朝の背山へ吸い込まれていく。好奇心旺盛な神戸っ子はすぐに、見よう見まねで取り入れ、「毎朝登山」が始まった-。

 「想像の部分もありますが、大きく外れていないと思いますよ」と笑うのは、神戸ヒヨコ登山会の会長・吉野宏さん(76)だ。

 開港後、神戸に住み始めた欧米人にとって、布引山や再度山は格好のレクリエーションの場所となった。加えて、「布引の滝の日本的な美しさにも魅了されたはず」と吉野さんは話す。

 神戸・阪神間の六甲山地は「近代登山発祥の地」といわれるが、「われわれの言う登山は、高く険しい山道を上がることではなく、自らの健康維持のために毎朝続ける習慣を指します。コツコツと続ける楽しさを忘れないように『ヒヨコ』を名乗っているんです」

 1922(大正11)年、わずか10人が再度山の茶屋に集まり発足した同会も、「山に感謝し、謙虚に登り続けよう」との思いを受け継ぎ、来年は100周年を迎える。

 吉野さんが登山を始めたのは20代後半。山麓の自宅近くの米国人牧師が真冬の早朝、薄着で走って出掛ける姿を見たことがきっかけだった。健康づくりを考えていた時期で、見ず知らずの牧師の後を追い、布引山を駆け上がったという。

 それからおよそ半世紀、午前3時半に起きて布引山に登り、皆が集まる展望台を清掃する生活を続ける。回数はもう、1万5千回を超えた。

 2018年には、新神戸駅からのハイキングコース周辺のトイレを新設するため、署名活動を展開した。布引山を愛する約5千人がすぐに賛同し、市に陳情書を提出。2カ所に整備されることになった。

 一方、大正後半から昭和初期の最盛期、150ほどあった登山会も、現在では19に。少子高齢化が進み、時間に融通の利く自営業者が減ったことが背景にあるという。

 だが、コロナ禍で遠出をしにくくなった今、都市部に近い布引山は再び脚光を浴びつつある。

 「都会の新幹線の駅から15分で、こんなに素晴らしい自然と風景が広がる所はほかにない。山に登って、いい汗かいて、滝を見ながら一杯やる。これほどぜいたくなことがありますか」

 吉野さんは今日もまた、市街地を見下ろす緑の中ですがすがしい朝を迎える。(安福直剛)

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