五輪柔道の阿部兄妹「金」 偉業に地元包む拍手、両親ら通う神戸の飲食店

2021/07/26 05:30

阿部兄妹がそろって金メダルを取り、歓喜する「よりみち」の後援会メンバー=神戸市兵庫区笠松通7(撮影・吉田敦史)

 25日にあった東京五輪の柔道で、そろって金メダルを獲得した男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ)(23)=神港学園高出身=と、女子52キロ級の阿部詩(うた)(21)=夙川高出身=の兄妹。両親が通う神戸市兵庫区のお好み焼き店では、地元が生んだ2人のスターを応援しようと、常連客ら約10人が集まってテレビ観戦した。店内は快挙の瞬間、割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。 関連ニュース 死闘24分間「令和の巌流島決戦」を制した阿部 逆境さえも血肉に 阿部一二三の激戦、父「生きた心地しなかった」 苦境支えてくれた家族と勝ち取った五輪切符 阿部詩、坂本花織、古江彩佳 国内外で活躍する3人に共通する「3440分の3」


 JR・神戸市営地下鉄和田岬駅付近の「よりみち」(兵庫区笠松通7)。阿部兄妹の祖父が通い始め、両親も訪れるようになった。兄妹の頑張りを知った店主の森好理江(よりえ)さん(72)は7年前から年に数回、全国で試合観戦。2017年には2人の後援会を結成し、現在、常連客ら約40人が加入する。翌18年には、アゼルバイジャンでの世界選手権も現地で観戦し、2人の優勝を見届けた。
 店には2人の五輪出場を祝う旗が掲げられ、これまでの活躍を伝える新聞記事やポスターが貼られる。本来、森さんら3人は会場に駆けつける予定だったが、無観客開催となってかなわなかった。
 この日、同店で人数を絞って応援することにし、準決勝前の夕方から常連客が訪れた。皆で鉄板を囲むと、日の丸に「必勝」と記された鉢巻き姿で、2人の名前入りのうちわを手に応援。海外にも応援に駆けつけた後援会会長の渡部芳幸さん(67)=明石市=は「挫折を乗り越えてここまで来た。2人とも絶対金メダルを」と気合を込めた。
 阿部兄妹はともに順当に勝ち進み、迎えた決勝。まず妹・詩が登場すると、店内の全員が身を乗り出し、画面を一心に見つめた。延長にもつれ込んだ末、相手を押さえ込むと、20秒を一緒に数えて応援。一本勝ちが決まると、森さんはむせび泣いて喜んだ。
 「あと一つ!」の声が飛び、兄・一二三の試合が始まった。先に技ありを奪うと、客らはうちわをたたいて喜び、「集中!」「冷静に」との声が店内に飛び交った。試合終了の瞬間には飛び上がって喜び、「わー」と声にならない歓声とともに、万歳三唱がいつまでも続いた。(井川朋宏)

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