夏に多発、車のSOS レッカー車で駆け付け即解決 JAFのベテラン隊員に同行

2021/08/17 05:30

パンク時の状況を聞きながら、タイヤ交換の説明をする伊藤直宏さん=神戸市北区

 夏はとりわけ車のSOSコールが多いという。いつ、どこで故障トラブルが起きても、24時間態勢で救援要請に応じるのが「日本自動車連盟」(JAF)のロードサービス隊員たちだ。数々の特殊機器を備えたレッカー車に乗って現場に駆け付ける。兵庫県全域を管轄するJAF兵庫支部(神戸市灘区)で、入社25年になるベテラン隊員伊藤直宏さん(44)の一日に密着した。(浮田志保) 関連ニュース 【写真】現場では他車の迷惑にならないよう、道路脇ぎりぎりに駐車 意外と見てない「タイヤの空気圧」下手すりゃ死亡事故に!? 画期的な警報器を開発した男性の思い 「寝ているから」は絶対だめ!真夏の車内は15分で熱中症危険レベル


 ■声掛けは穏やかに      
 午前9時40分、出勤して事務所で制服に着替え、隣の車庫へ。レッカー車のオイルや冷却水の点検を済ませて運転席に乗り込んだ。
 10時。タブレット端末を手に「準備完了」のボタンを押して業務が始まる。つながる先は、救援要請を受けて隊員に指令を出す大阪市の「関西コールセンター」。すぐに端末が鳴った。
 ピロピロピロ-。神戸市灘区で中年男性が車を動かせなくなっている。伊藤さんは画面に示された情報を見て携帯電話で男性に連絡し、穏やかに告げた。
 「すぐに向かうので安心してください」。焦って車から出たり、無理に車を動かそうとしたりして事故に遭う危険もあるため、まずは不安を和らげたい。
 ■原因を突き止める      
 数分後、向かった先は男性の自宅。ヘッドライトをつけたままにしてバッテリーが上がっていた。「エンジンスターター」と呼ばれる箱形の充電器を取り出し、ケーブルでつなぎ電気を通すと、瞬く間に直った。
 10時40分。タブレットで「作業完了」を押すと、画面上にはもう次の指令が。コールセンターは隊員の居場所を把握しつつ、現場に近い順に出動を要請する。
 数キロ先で若い男性が自宅で車を動かせなくなり「理由が分からない」と、かなり戸惑っている。車内を調べると、“犯人”はドライブレコーダーだった。
 前日には台風9号が最接近。車体が強風に揺さぶられ、車に「いたずら」をする人を録画しようとする機能が何度も誤起動して充電が切れてしまったのだ。
 ■車は進化している      
 その後も伊藤さんは転戦を続ける。11時10分、エンジン不良▽正午、タイヤのパンク▽午後1時10分、誤操作で発進できないトラブル▽2時、ライトの消し忘れでバッテリー上がり…。
 3時、ようやく車内で、妻特製のおにぎりを頬張った。次の指令を待って休む間、ふと漏らした。
 「人は平等に老いるけど、車はどんどん進化するんですよね」。この日も発進できないトラブルの一つは、シフトレバーにマスクのひもをかけており、それだけで安全装置が働いたことが原因だった。
 「特に高齢者に今の車は難しい。だから慌てず気軽に電話してほしいんです」
 車が好きでこの仕事を選んだ伊藤さんも日々、会社の研修や自宅で最新機器の勉強を続けている。
 ■仕事のやりがい       
 兵庫支部によると、2020年度の出動件数は9万4480件で、うち8月は8828件と月別で最多。熱気でバッテリーに負荷がかかるなど、季節ならではの事案も目立つという。
 4時20分。再びタブレットが鳴った。神戸市須磨区で中年男性のエンジントラブル。キュルキュル…と音がしてかからず、充電しても直らない。そこでバッテリーを交換すると、男性はほっとした表情で言った。
 「出掛けないといけないのに、どうしようかと思って…。本当にありがとう」
 シフト制の勤務終了が迫り、伊藤さんは帰路につきながら笑みをこぼした。
 「ああして感謝の言葉をもらうでしょう。そのたびに、この仕事をして良かったなあって思えるんです」

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