社長も驚きの完成度「ゴーフル缶」がドラムに変身 神戸風月堂の社員がリアルさ追求
2021/08/27 05:30
ゴーフル缶を使って作られたドラムセットの模型=神戸市中央区元町通3
神戸の銘菓でおなじみの「ゴーフル」が、華麗なる変貌を遂げた。といっても、商品ではなく缶の話だ。メーカーの神戸風月堂(神戸市中央区)の社員が今夏、ゴーフル缶を使ってミニチュアのドラムセットを制作。広報担当者がツイッターに投稿したところ、その精巧な出来栄えと遊び心に大きな反響が寄せられたという。(井上太郎)
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元町三丁目商店街にある元町本店の1階。店の中央付近、商品よりも目立つ“一等地”のショーケースに展示されたミニチュアドラムセットは、照明を浴び、独特の存在感を放っている。
大きさは、本物のドラムセットのおよそ4分の1。レギュラーサイズ(直径17センチ)の茶色い缶で作った最も大きなバスドラムの前面に、ゴーフルのトレードマークロゴが光る。ほかにも2連の小さなドラム「タム」はミニサイズ(直径9センチ)、中くらいの「フロアタム」と「スネアドラム」は、数年前まで期間限定販売していた中サイズ(直径13センチ)の缶を使っている。
元の商品規格を生かしつつ、高さはドラムセット仕様に変更している。いずれも取引先の「大阪製缶」(大阪府東大阪市)への特注品。一見ゴーフル缶とは関係なさそうな金色のシンバルなども、実はゴーフル缶を裏返して加工したものというこだわりぶりだ。
ゴーフルといえば、薄焼き煎餅にクリームを挟んだ銘菓で、1927(昭和2)年の発売から愛され続けるロングセラー。「関西の家庭には一家に1個ある」とも言われるゴーフル缶で「ドラムセットを作れないか」とひらめいたのは、下村明久社長(49)だった。
ピアノも弾くという音楽好きな社長のとっぴな提案に応えたのは、西神工場(神戸市西区)設備管理課の男性社員だった。
男性は普段、生産ラインの機械新設や改修を担当。業務の合間にこつこつと設計、金属加工を進めた。スマートフォン用の三脚や工場設備用の金属部品を駆使し、脚や留め具などの細部までリアルさを追求。約4カ月かけて仕上げた。
想像をはるかに超える完成度に、下村社長も「思わず笑ってしまった」と振り返る。店に飾った7月1日、社のツイッター公式アカウントにも、「社長のつぶやき」に「工場の技術班が、本気を見せた」との短文を添えて写真を投稿。すると、転載する「リツイート」が約1万9千件、賛同を示す「いいね」の数が約5万5千件という反応があった。プロバンド「凜として時雨」のドラマーからも、「すごい!かっこいい!」とのコメントが寄せられた。
広報の松本穂(みのり)さん(30)は「バスドラムの『GAUFRES』(ゴーフルズ)が、『BEATLES』(ビートルズ)みたいだと言ってくれる人もいる」と喜ぶ。「家族や友人と見に来てもらうことで、ゴーフルのファンが増えたらうれしい」と期待を膨らませた。
ちなみに、動かせるのはバスドラムのフットペダルのみ。ドラムは全て膜の部分が革ではなくビニール製なので、たたいても音は出ないという。
展示期間は未定だが、少なくとも10月末ごろまでは飾られる予定。神戸風月堂TEL078・321・5598