震災の記憶刻まれた記念樹、枯れて伐採 「継承してほしかった」残念がる市民も
2022/01/09 05:30
伐採前の枯れたケヤキ=神戸市長田区大丸町2、大丸山公園
昨秋、「阪神・淡路大震災で焼け残ったケヤキが枯れてしまった」と、神戸市長田区の男性(56)から神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に情報が寄せられた。震災の発生から17日で27年。男性は「風化させないためにも、単に切り倒すのではなく何らかの形で継承してほしい」と願ったが、倒木の危険性から結局、伐採されてしまった。記念樹を切り出す場合に前例や決まりはあるのか。調べてみた。(小野萌海)
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ケヤキがあったのは、大丸山公園(同市長田区大丸町2)。南側の入り口近くにシラカシと並んでいた。
神戸市の情報では、2本の木は、震災による火災の被害が大きかった同区若松町3の新長田公園で焼け残った。震災の体験と復興への希望を記憶する証しとして、大丸山公園に移植。切り倒される前のケヤキには、震災で黒く焼けた樹皮がまだ残っていたという。
男性によると、ケヤキが新芽を吹かなくなったのは、2020年春ごろ。次第に枯れていく様子を見て、21年9月に市に連絡した。市は倒木の恐れがあるとして、同年10月に伐採し、今は切り株が残る。
男性は「新たに植樹したり、ケヤキの記録を看板に残したりすることはできないか」と要望したが、市西部建設事務所の担当者は「現段階でその予定はない」と回答。「記念樹の伐採にルールはなく、前例もなかったが、今回は危険回避のためだった。残ったシラカシは、剪定(せんてい)や肥料で保全していく」と説明する。
男性は「震災の記憶が目に見えて残っていたのがケヤキだったのに、本当に残念」と惜しんだ。
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