救えなかった多くの命…涙にじませ「悔しい。ごめんなさい」 震災の記憶、若手署員に継承 神戸・長田署

2022/01/14 17:30

語り部として、阪神・淡路大震災当時の経験を語る長田署員=神戸市長田区北町3、長田署

 兵庫県警長田署(神戸市長田区)で13日、27年前の阪神・淡路大震災を経験した4人のベテラン署員が若手署員ら約50人に向けて、震災の記憶や教訓を伝えた。 関連ニュース 「目を見開き焼けていた弟の顔を、忘れられない」震災で幼い弟2人失う 被災者と同じ弁当希望、災害発生のたび連絡 両陛下の兵庫との絆 災害時つながりやすい「頼みの綱」 公衆電話、27年で6分の1に減 「残すため」積極利用の呼び掛けも

 長田区では1万5521棟の建物が全壊し、火災によって多くの住宅が焼失。死者は921人に上る。同署では今、当時の災害警備を経験していない署員が約75%を占める。そこで記憶の風化を防ぎ、災害に備える意識を高めようと講話を企画した。
 地域1課の土佐亨弘警部補(55)は当時、同区の倒壊家屋に出向き人命救助に当たった。自らの手を握りながら冷たくなっていくなど、助けられなかった多くの命を振り返り「悔しい。ごめんなさい」と涙をにじませた。最後に「人を助けるのは人。資機材を現場で使えなければ任務を全うできない。全員が点検し訓練しておくべき」と力を込めた。
 地域3課の山本春希巡査(20)は土佐警部補の話に感銘。「普段から危険箇所や高齢者や幼い子どもがいる場所の把握に努めたい」と話した。
 このほか、刑事2課の四間久雄警部補(60)は震災の1年後に体調を崩した経験を明かし「自身の健康管理が大切」、地域1課の山下克久巡査部長(55)は「公私ともハザードマップを利用し、日ごろからシミュレーションを」と呼び掛けた。交通課の首藤茂警部補(53)は「有事には連絡手段がなくなり、無線の電池も切れる」などと教訓を伝えた。(小野萌海)
【特集ページ】阪神・淡路大震災

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