87歳元警官が書くミステリー 震災のショック「執筆」で癒やし 創作20年の集大成、自費出版

2022/01/20 05:30

小説「カムイ岬に愛を求めて」を自費出版した村岡勝さん=神戸市灘区

 兵庫県警兵庫署長や刑事部参事官を務めた県警OBの村岡勝さん(87)=神戸市灘区=が、ミステリー小説「カムイ岬に愛を求めて」を自費出版した。県警を退職後、阪神・淡路大震災を経験したショックから「何かに逃げたくておもむろに始めた」のがきっかけという、20年以上にわたる創作活動の集大成と位置づける作品。約半年かけ、スリリングな物語を書き上げた。(井上太郎) 関連ニュース 大泉洋さんを直接説得、その結果… 売れっ子小説家・塩田武士氏、メディアミックスを語る 俳優松尾諭さん、航空券を拾ったら人生動き始めた 自伝風エッセー出版 ゲームで人気、悪役陰陽師・蘆屋道満 実は無欲の人格者だった 呪術廻戦にもモデル


 村岡さんは加古川、明石署長などを歴任し、兵庫署長を最後に1994年、県警を退職。震災時はJR西日本神戸支社に勤めており、被災状況の確認に走り回った。壊滅的なまちの状況を目の当たりにし、「自分の中で全ての価値観がひっくり返るような感覚で、とにかく怖かった」と回想する。
 不安定な気持ちを唯一吐き出せたのが、書く時だった。文章教室に通い、故郷・丹波市山南町にあった太田城にちなんだ「太田悠(ゆう)」のペンネームでエッセーや小説を執筆。太田城主の家老で、村岡さんのルーツとも考えられる村岡氏の由来に迫る歴史小説や、現場に生きる刑事らを活写したミステリー小説など約50作の中短編を手掛けてきた。2004年には、文芸誌の文学奨励賞を受けている。
 新作では、自身も訪れたことがある北海道の神威岬を舞台にした。日本海の荒波が打ち寄せる、その断崖絶壁での「事故による転落」とみなされていた父親の死に疑問を抱いた息子が、真相を探るストーリー。親族や仲間のさまざまな疑惑が見え隠れする中、意外な事実が明らかになっていく。
 昨年11月に出版し、県立図書館(明石市)や神戸市立中央図書館など県内各地の図書館に、計約50部を寄贈した。村岡さんは「創作はもともと自分のために始めたが、読んだ人が喜ぶ、楽しめる文章を書きたいのだと後に気付いた。そういう作品に仕上がっていたらうれしい」と話している。
 B6判167ページ。

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