「出合えたのは運命的」50年前に廃止の神戸市電、魚礁として「第二の人生」 須磨沖の海底で撮影

2022/01/26 05:30

水中撮影した写真には随所に魚介の姿も見られる(宮道さん提供)

 魚礁として神戸・須磨沖に沈められた神戸市電の車体を、同市文化スポーツ局副局長の宮道成彦さん(56)が水中撮影に成功した。1971年の廃止から50年を超えた今も、別の役割を果たす姿を会員制交流サイト(SNS)で発信し、反響を呼んでいる。「想像以上に多くの人が喜んでくれた。市電を知る高齢の市民に今の姿を伝えたい」と話している。(津谷治英) 関連ニュース 【写真】車両基地で保存されている神戸市電 「東洋一」愛称の神戸市電、広島電鉄へ移籍し半世紀 デザイン復元、節目PR 路面電車なのにクロスシート!?「東洋一」と呼ばれた理由


 神戸市電は1910(明治43)年に開業。緑を基調とするツートンカラーの車体で知られ、導入した技術の先進性から「東洋一」と評価された。廃止後に車両の一部は広島電鉄(広島市)に引き継がれたが、約60両が魚礁として須磨海づり公園の東南沖に沈められた。
 宮道さんは84年に入庁。交通局に配属され、地下鉄の延伸作業に関わる中で、市電の運転士や女性車掌を務めた先輩からその魅力を聞いてきた。
 子どもの頃からの海好きで、30年前からダイビングも始めた。国内外の自然をとらえた写真を発表するなど、海中写真家としても活動する。その傍らで、阪神・淡路大震災後の海の変化を記録しようと、地元の海にも潜ってきた。昨年、廃止から半世紀の節目となる市電の今の姿を探索しようと、水中撮影する決意をした。
 第5管区海上保安本部の記録を参考にしながら、海づり公園付近の約500メートル四方の海域に4回潜水。毎回40~50分をかけて水深20~25メートルの海を潜った。速い海流を避けるためにプロのダイバーが付き添い、地元の水産会社も船上からボンベをつり下げるなど、安全面で協力をしてくれた。
 昨年12月、車体の前面を確認。周辺から窓ガラス片が見つかり、現役当時の形をとどめる室内灯の部品なども確認した。「50年目に出合えたのは運命的と思う。私一人ではここまでできなかった」と協力者に感謝する。
 仲間の職員や鉄道ファンらがSNS上の写真を見て賛辞をくれたという。「いずれは写真や引き揚げた部品を展示し、交通局の先輩にも見てもらいたい」と話している。

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