<わが町の文化財>神戸市東灘区御影塚町4 国登録 甲南漬資料館 昭和モダン漂う邸宅

2022/05/13 14:00

昭和初期のモダンな雰囲気が漂う甲南漬資料館=神戸市東灘区御影塚町4

 かまぼこ形の屋根を持つ階段室には、縦長の三角の窓。応接室は八角形を半分にした形で張り出し、室内に光が降り注ぐ。白い外壁とともにモダンな雰囲気の建物だ。 関連ニュース 親子二代で仏家庭の味提供「ビストロ・ド・ノブ」41年の歴史に幕 三木市本町、常連客「本当にさびしい」 阪急沿線のモダンな歩み紹介 小林一三生誕150年、大阪で記念展 戦前の宝塚歌劇や鉄道事業 プロジェクト10年目、生まれたメニューは400超 神戸の酒蔵を拠点に広がる酒粕の食文化

 神戸・阪神間に独特の文化が花開いていた1930(昭和5)年、奈良漬「甲南漬」を製造販売する高嶋酒類食品(神戸市東灘区)の2代目、高嶋平介社長の邸宅として建てられた。「どこか船をイメージさせる」と高嶋郁夫常務(71)は話す。
 鉄筋コンクリート2階(一部3階)建て。近くにある御影公会堂と同じく、神戸市初代営繕課長を務めた清水栄二(1895~1964年)が設計した。一点一点デザインが異なる照明器具、舶来の調度品が室内を彩る。洋式の風呂、水洗トイレを備え、時代の最先端の建物だったことがうかがえる。
 95年の阪神・淡路大震災で、同じ敷地にあった旧本店や大広間などが倒壊したが、この建物だけが無事だった。高嶋常務は「地震、火事、水害にも耐える建物を造っておきたかったのでしょう」と推し量る。当初から防火シャッターを備えるのも、それを裏付ける。
 震災後の97年、奈良漬の歴史や製造法を紹介し、灘五郷の御影郷・魚崎郷の街並み模型を展示する「甲南漬資料館」として整備した。
 応接間は、建築当初のテーブルやソファなどをそのまま残し、開放している。「近くの人がゆっくり新聞を読んだり、隣接する本店で買い物をしたグループがおしゃべりしたり、自由にくつろいでもらっています」。2階の寝室、子ども部屋は、音楽や絵画、工芸などのカルチャースクールとして利用されている。
 時は流れたが、役割を変えて生き続けている。
(武藤邦生)
〈メモ〉 2010年、国登録有形文化財に。入館無料。館内には、食事どころ「平介茶屋」なども。一帯は「こうべ甲南 武庫の郷(さと)」として整備され、甲南漬本店や飲食店もある。甲南漬資料館TEL078・842・2508
〈アクセス〉 JR六甲道駅から南東へ徒歩10分、阪神新在家駅から東へ3分。駐車場あり。
【2016年9月22日掲載】

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ