「ぜひ声に出して読んで」世界の子守歌と思い出 絵本に 神戸のNPO、限定無料配布
2022/06/02 16:00
在住外国人などから聞き取った子守歌が紹介された絵本=神戸市長田区久保町6
神戸市在住の外国人らから聞き取ったそれぞれの土地の子守歌や幼児期の思い出を伝える絵本「神戸・長田のちいさな子守唄」ができた。新型コロナウイルス禍で他国との行き来が制限される中、地元のNPOなどが地域における国際交流を目指して企画。数量限定で無料配布している。(霍見真一郎)
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きっかけは、同市長田区のNPO法人「ダンスボックス」のディレクター横堀ふみさん(44)が、子どもを寝かしつけるベトナム人の夫が口ずさんだ子守歌を聞いたことだった。
「母親が歌ってくれた」と話す夫に「ベトナムとつながる時間だったのかな」と感じた横堀さん。「子どもが健やかに育ってほしいと願うのは、どの国の親も同じ」と考え、国際交流基金アジアセンター(東京、現在は改組)と共に、各国の子守歌を紹介する絵本を作ることにした。
協力してくれたのは、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、フィリピン、韓国、鹿児島県徳之島にルーツを持つ神戸在住の9人。
現地の言葉で書かれた歌詞と日本語訳、その歌にまつわる思い出話などを、語りかけるような文体でつづった。絵は、幼子を育てる京都市のイラストレーター中井敦子さんが担当。演劇の演出家が編集に関わり、ページを繰るたび、舞台公演のような空気感を得られる雰囲気に仕上げた。協力者たちがそれぞれ歌う子守歌を聴けるサイトにつながるQRコードも付けた。
父の教えは山のようにおおきい 母の恩は湧き続ける水のよう
ベトナムから移住した僧侶の男性は、幼い頃に祖父の腕の中で聴いた歌に「古里と家族のことを思い出す」と添えた。ハンモックで眠っていたという。
メイティーラー池で カエルを捕まえてきてあげる 白鷺(しらさぎ)が次々と飛びたちおうちにかえっていくよ
ミャンマーからの女子留学生が教えてくれた歌詞には、アルファベットの「O」のような文字が並ぶ。女性は「ミャンマーの文字は丸いので、幼い子どもはひたすら丸を書く練習をする」と打ち明けた。
ねんねんぐゎせ ねんねんぐゎせ
兵庫県には奄美からの移住者も多い。徳之島から来た元教員の男性は「奄美の言葉には、日本語の文字で書けない発音がある」と独特の節回しを紹介した。
横堀さんは「子守歌には文化が詰まっている。ぜひ声に出して読んでほしい」と話している。
縦23センチ、横25センチ、43ページ。カラー。無料で配布中で、残りは約150冊。送料(271円)を負担すれば郵送可能。ダンスボックスTEL078・646・7044