「辛口=きつい」じゃない! 日本酒の世界へ甲南大生が硬軟交えてアプローチ オリジナル情報誌を発行
2022/09/03 05:30
2020年度に「硯水」の第2巻を編集した(左から)木下菜月さんと鳥居柊平さん=神戸市中央区港島南町7
甲南大(神戸市東灘区)の学生と教授でつくるプロジェクトチームが、日本酒文化をテーマにしたオリジナルの情報誌を作って一般公開している。卒業生が経営に関わる酒蔵などを訪問しながら、地元・灘五郷の魅力を文系、理系それぞれの目線で深掘り。2019年度から毎年1巻のペースでこれまで3巻(計約1万部)を発行しており、酒蔵併設の資料館などで無料配布している。
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■文系も理系も
タイトルは「硯水」で、副題は「お酒にまつわる四方山話」。地域の発展に貢献しながら学生が歴史を知り、伝える力を培う取り組みにしようと始めた。フロンティアサイエンス学部の西方敬人教授(61)の下、同部や文学部、経済学部にまたがる毎年15人前後のメンバーで企画を考え、編集する。
沢の鶴や菊正宗など、甲南大OBが社長を務める酒造会社から取材を広げてきた。19年12月に発行した第1巻「『灘』と『樽』」(カラー14ページ)では、昔ながらの木製道具を内製する剣菱酒造のこだわりや、近代日本における酒税の変遷を取り上げた。
イギリスの推理小説「樽」(F・Wクロフツ)を引き合いに運搬用ツールとしての酒だるの意義を考察したコラムもあり、硬軟自在の切り口が光る。
酒造技術に焦点を当てた第2巻では、「甘口」と「辛口」で表すユニークな味の表現に着目。日本酒度や酸度、アミノ酸度といった指標と風味の関係について、各指標を導き出す計算式も添えながら解説する。
■幅広いテーマ「酒かすカレー」も
筆者で現在甲南大大学院フロンティアサイエンス研究科1年の木下菜月さん(22)は「『辛口=きつい』と思い込んでいたけど、意外と甘く感じる辛口のお酒もあって、とても奥深いなと感じた」と振り返る。
同科2年の鳥居柊平さん(23)は「酒かすカレー」をテーマに、酒かすを使う量によってとろみや甘みがどう変化するかを調べ、家庭的な記事にまとめた。「酒かすの消費拡大につながる発信ができないかと知恵を絞った」と話す。
20代の男女約200人に行ったアンケート結果などを基に、第3巻では「若者×日本酒」特集を組んで今年3月に発行した。紙の冊子は、日本酒文化の発信拠点「灘五郷酒所」(神戸市東灘区御影本町3)など約10カ所で配布。インターネット版は大学ホームページのプレスリリースにQRコードを掲載している。問い合わせは甲南大ポートアイランドキャンパス事務室(TEL078・303・1457)まで。
(井上太郎)