「プリントゴッコ」まだあった!ノスタルジックに神戸の下町表現 元町で作品展も、作家「やりきった」

2022/09/27 05:30

今回で最後となる作品展を開催中の和田直子さん=神戸市長田区

 昭和後期、多くの人が年賀状作りでお世話になった「プリントゴッコ」。家庭で簡単に印刷ができる機械で、1987年には72万台が売れた大ヒット商品だ。パソコンやプリンターの登場で姿を消したが、今も創作に使うプリントゴッコ作家が神戸にいる。神戸市長田区在住のイラストレーター和田直子さん(55)。29日まで展覧会を開催中だが、原板などの消耗品が底をつきつつあるため、今回が最後になるという。(小谷千穂) 関連ニュース 【写真】プリントゴッコで描いた新長田の丸五市場 【写真】昭和の大ヒット商品、プリントゴッコ 「プリントゴッコ」使った映画のポスターなど展示 和田直子展


 プリントゴッコは理想科学工業(東京都)が77年に発売。累計1千万台以上が売れたといい、4~5世帯に1台あった計算になる。2012年に関連商品を含む全ての販売を終えた。
 文字や絵を手書きで表現した原稿をフラッシュランプの熱で原板に写し、特殊な絵の具で版画のように色を刷る仕組み。1990年代にインクジェットプリンターが低価格で市場に並ぶようになった上、年賀状を出す人も減ったため需要が下がった。
 和田さんは神戸市東灘区出身。高校生の頃、友人宛ての年賀状にプリントゴッコを使っていたという。「当時は百貨店で実演販売をやっていたほど大人気だった」と振り返る。
 その後は一時、使わなくなったが、10年前に知人が遠くに引っ越し、月1回はがきを出す習慣ができたのをきっかけに、自宅にあるプリントゴッコを思い出した。久々に使ってみると、色がずれたり、かすれたり、独特な味があった。一度に塗れる色の数に制限があったり、ランプで転写する時に「カシャ」という音がしたりするのも面白く、いつしか「くせになった」。
 長年の名作映画や、神戸の下町をモチーフに創作を始めた。ノスタルジーを感じさせる作品のテーマや画材が「懐かしい」と好評を得た。
 原板やランプなどの消耗品はいらなくなった人から集めた物を使ってきた。既に販売を終了しているため、インターネット通販では定価の5倍ほどの値段が付いた。在庫もなくなり、「やりきった」との思いも相まって、プリントゴッコ作家の卒業を決めた。
 展覧会は古書店「花森書林」(神戸市中央区元町通3)で開催中だが、同店の休日を除き見られるのは最終日の29日のみ。モトコータウンや新長田の下町など、昔ながらの街並みを色彩豊かに描いた約40点が並ぶ。ポストカードも販売。和田さんは「昔を思い出しながら楽しんでほしい」と呼びかけている。29日は午後1~5時。無料。花森書林TEL078・333・4720

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