「私宅監置」禁止後も続いた沖縄 「消された」障害者の実態に迫るドキュメンタリー 15日上映

2022/10/13 11:30

映画に登場する私宅監置の小屋跡。富俊さんが約13年間を過ごした(原義和監督提供)

 法の下で自宅敷地内の小屋に隔離された精神障害者に焦点を当てたドキュメンタリー映画「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」が15日午後2時から、東灘区文化センター(神戸市東灘区住吉東町5)で上映される。隔離によって名前や顔を忘れられた人々の存在を世に知らせようと、関係者を追った。原義和監督は「今も、私たちは誰かが排除された社会を良しとして暮らす。罪は続いている」と現代社会に警鐘を鳴らす。(小谷千穂) 関連ニュース 患者を裸にして放水、キス強要や監禁も 看護師ら6人逮捕「リアクション面白かった」 「気持ちいいか…」患者に暴力、わいせつ行為 精神科病院の看護スタッフ2人 「指示聞いてくれなかった」患者の胸ぐらつかみけが負わす 看護師を書類送検


 2021年春に公開。同年度の文化庁映画賞を受賞した。1900年に施行された法律で、精神障害者を自宅敷地内の小屋に閉じ込めて監禁する「私宅監置」が合法化された。本土では50年に禁止になったが、沖縄では72年まで認められた。
 作品はその沖縄が舞台になっている。始まりは、原監督が精神医療について取材中、小屋から顔をのぞかせる人々の写真に出合ったこと。広さ畳3枚分ほどの小屋にトイレはなく、食事の差し入れ口以外にほぼ窓はない。原監督は小屋の中の人々を「存在しないかのように隠された命」だと感じ、「本人に許可をとって写真を公表する」と決意した。
 少ない情報を頼りに、写真に写った人たちを捜したが、家族さえ見つからない状態。見つかって、激高されたこともあった。
 作品に出てくる「富俊さん」は戦争によって心を病んだとされ、母屋のそばに立つ小屋に13年間いた。8歳下の弟は「優しい性格だった」と唇をかむ-。
 日本の精神科病院の入院患者は2020年の調査で約29万人に上る。平均入院日数は277日で、経済協力開発機構(OECD)諸国より10倍ほど長い。原監督は看護師らが患者に虐待した西区の神出病院事件に触れ、「私宅監置の歴史を検証しないまま放置した結果、社会のほころびが出ている」と指摘する。
 映画上映は市民らでつくる実行委員会などが主催。原監督や精神医療問題に取り組む人らが語る動画も流れる。午後4時半まで。18歳以上千円。要予約。 申し込みは予約フォーム( https://forms.gle/K7jges9qsAjcAABs9 )から。

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