「廃虚の女王」旧摩耶観光ホテルが国登録文化財に 施設の活用策を探るシンポ開催
2022/11/08 05:30
廃虚の魅力や旧摩耶観光ホテルの今後について意見を交わしたシンポジウム=神戸市中央区小野浜町
廃虚ファンが集まり、施設の保存や活用の方法などについて考える「廃墟景観シンポジウム」が、神戸市中央区小野浜町のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開かれた。探検家や写真家、社会学者らさまざまな分野の愛好家が参加。異なる視点から意見を交わし、魅力を生かすための多様な可能性を探った。(谷川直生)
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ファンから「廃虚の女王」と呼ばれる「旧摩耶観光ホテル(マヤカン)」(同市灘区畑原)が昨年6月、国の登録有形文化財に指定されたことを記念したシンポ。ともに廃虚ファンで、プロデューサーの桑野和之さんと、産業遺産の保存・活用に取り組むNPO法人「J-ヘリテージ」(同市)の前畑洋平代表が企画した。
シンポは、人はなぜ廃虚にひかれるのか▽廃虚は文化遺産となり得るのか▽マヤカンの今後について-の三つのテーマで行われた。
廃虚にひかれる理由については、登壇者らが「遊園地のアトラクションのように非日常が味わえる」「人を過去に連れて行くパワーがある」と魅力を説明。文化財に指定されると建立当時の姿に復元されることが多いことに触れつつ、「マヤカンは廃虚景観を維持した初の文化財になり得る」と期待する声が上がった。
文化遺産を巡っては、大学教授や研究者らが意見を交わし、文部科学技官としてマヤカンの文化財登録に関わった兵庫県姫路市文化財課の福田剛史さんもオンラインで出演。マヤカンについて「建てられた時の価値に重きが置かれた」としながらも、「当時のホテルの姿に戻すのではなく、今の姿が大事だから審議にかけられた」と経緯を説明した。
テレビ番組「クレイジージャーニー」に出演する写真家の佐藤健寿さんも参加し、世界各国の廃虚を見てきた経験から「浄化することだけが保存ではない」と強調。「マヤカンは神戸で1番人気の場所になる可能性もある」と期待を口にした。