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道徳の授業で、島田叡・元沖縄県知事について学ぶ生徒たち=2018年5月、加古川市の別府中学校
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道徳の授業で、島田叡・元沖縄県知事について学ぶ生徒たち=2018年5月、加古川市の別府中学校
島田叡・元沖縄県知事
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島田叡・元沖縄県知事
兵庫県内の中学校で使用されている道徳の副読本「心かがやく」
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兵庫県内の中学校で使用されている道徳の副読本「心かがやく」

 太平洋戦争末期の沖縄戦を題材にした平和教育が、兵庫県内の中学校で広がっている。年間100校以上が修学旅行で戦跡を訪ねているほか、歴史や道徳、総合学習の一環として取り組む学校も多い。大きな要因となっているのが、戦時下で住民保護に尽力し、「島守(しまもり)」と呼ばれた神戸出身の元沖縄県知事・島田叡(あきら)氏の功績。兵庫県教育委員会が各校に配る道徳の副読本でも島田氏が紹介されており、教材として活用されている。(津谷治英)

 今年3月、加古川市の中部中学校で当時の2年生が、沖縄戦を取り上げたテレビのドキュメンタリー番組を視聴した。「鉄の暴風」と呼ばれた激しい砲爆撃、住民が地上戦に巻き込まれる様子…。男子生徒の一人は感想文に「戦争という殺し合いは二度としてほしくないと、前よりも強く思った」とつづった。

 映像と併せて教材に使われるのが、道徳の副読本「心かがやく」だ。県教委によると2011年度から各校に配布し、道徳に限らず、歴史や総合学習など幅広い活用を想定。神戸ゆかりの作家・故陳舜臣(しゅんしん)さんの著書から引用した、島田氏を追悼する文も載せている。同校は5月の沖縄への修学旅行を前に、この本を使って事前学習を実施。安田紫織(しおり)教諭は「平和な世の中を願った島田さんの遺志も学んでほしい」と話す。

 島田氏は神戸市須磨区出身で、終戦の半年前、最後の官選知事として沖縄に赴任。県民の疎開や食糧調達などに尽力し、戦渦の中、沖縄県糸満市で消息を絶ったとされる。

 兵庫独自ともいえる島田氏の足跡を学ぶ手法は、島田氏の母校の兵庫高校(神戸市長田区)が古くからけん引役を果たしてきた。1964年、校門近くに「合掌(がっしょう)の碑」を建立して偉業を語り継ぎ、2015年からは修学旅行で現地を訪問。島田氏を追悼する「島守の会」(那覇市)とも交流してきた。

 県教委によると、沖縄を修学旅行先に選ぶ中学校は多く、17年度は106校(31%)。行き先では関東地区と並び1位だった。10年前からは約20校増えているという。全国修学旅行研究協会は「近年、航空運賃が安くなったのも大きい」と分析する。

 県教委は副読本に島田氏を取り上げたことについて「修学旅行の事前学習に最適の教材。沖縄に興味を持つきっかけにもなる。家庭に持ち帰り、親子で平和について話し合うきっかけにもなれば」とする。

 本土復帰前から毎年沖縄を訪れているという渡辺武達・同志社大名誉教授(メディア学)は「戦時体制の中で島田さんのように人間愛を貫いた人がいた。若い人が兵庫の先人を通し、沖縄を犠牲にしてきた歴史や人間の生き方などを学び、考える素材としてほしい」と話す。

■加古川・別府中教諭を表彰

 加古川市の別府中学校の玉田充代教諭は、沖縄戦の平和学習の実践が認められ、2月に東京都の公益財団法人から「上廣(うえひろ)道徳教育賞」の佳作を受けた。意欲的授業を企画した教諭らに贈られる賞。同校の3年生全員が、沖縄で開かれた島田叡氏らを追悼する「島守忌(き)俳句大会」へ作品を送ったことも評価された。

 同校は沖縄の学習の歴史が長く、20年前から修学旅行先にもしている。俳句大会参加は、戦争に関する知識を得るだけでなく、自分で考えた意見を言葉に残してほしいとの試みだった。

 「心かがやく」を活用し、島田氏が住民の生命を重視したことを授業で伝えた。その生き方から感じたことを表現し、生徒は計173句、教師も13句を送った。戦争、平和、命…。思い思いに浮かんだ言葉が込められた。

 審査員からは「どの句からも平和を願う思いがあふれている」とされた。ある男子生徒の句「永遠に 戦争(つみ)は起こさぬ 島守忌」は、「戦争」と書いて「つみ」と詠ませた点が「素晴らしい感性」と評価された。

 「命の大切さ、戦争がない世の中を伝えることは、どの教師も考えることだが、うまく伝えるのは難しい」と玉田教諭。「新しい学習の形を発見できた」と手応えを語る。

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