32年にわたり地域住民らに愛され、カラオケも楽しめる喫茶レストラン「バロネス」=兵庫県三木市=が2月20日に閉店する。年中無休で店を切り盛りする坂下政俊さん(73)、シズ子さん(73)夫妻=同県三木市=が第二の人生を歩もうと区切りをつける。なじみの客は閉店を惜しみつつ門出を祝っている。(大橋凜太郎)
政俊さんは20代前半に飲食店の経営者を志し、大阪のレストランなどで修業を積んだ。開店直後の喫茶店にノウハウを伝える指導員も経験。1988年3月に現在の店舗を借り、喫茶レストランをオープンした。開店直後から客足は絶えず、人気を集めたのはボリューム満点のセットメニュー。連日満席で、列ができる日もあった。
市内に別の2店舗を構えたこともあったが、バブルの崩壊を機に閉じ、その店舗で人気があったカラオケ喫茶の機能をバロネスに移した。常連客の歌に聴き入り、時には自らステージに立つことも。「昔は下手だった人も、先生のようにうまくなった」と政俊さんは目を細める。
平成、令和と時代をまたいでもなお、バロネスは憩いの場であり続けた。しかし、体力の限界を感じていた夫妻は新たな人生を考え始め、半年ほど前から店じまいを検討。営業許可が切れる2月を節目とした。
政俊さんは「年上のお客さんが多く、アドバイスをもらいながら一生懸命やってきた。ずっと一緒に生きてきたので、今後もつながっていたい」と育んできた絆を慈しむ。「後を継いでくれる人がいればいいな」との期待も寄せた。
シズ子さんは常連客らに感謝すると共に「朝から晩まで店で働いていたので、今までできなかったことをしたい。夫婦で散歩したり、体操教室に行ったりするのもいいね」と話した。
開店して間もない頃にウエートレスとして数年働き、その後も常連として足を運ぶ戸田美代子さん(67)=同県三木市=は「つらい時も励ましてくれて、勇気をもらえた。今、笑顔で過ごせるのは2人のおかげ」と晴れやか。「閉店はさみしいけれど、これからも仲むつまじく元気で過ごしてほしい」と願っている。
午前8時~午後10時。26日と2月16日の午後1時からは、自由に歌を披露する「ミニ発表会」がある。参加費はケーキとドリンク付き1200円。バロネスTEL0794・83・5039
