三木

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斬新なデザインの包丁を手にする田中誠貴さん=三木市
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斬新なデザインの包丁を手にする田中誠貴さん=三木市

■田中一之刃物製作所代表・田中誠貴さん(42)=兵庫県三木市

 ロリータファッションを基調とした包丁やロボットアニメの武器に似せた実用品…。斬新なデザインの包丁を打ち出して注目を集め、三木金物の品質の高さを知らしめる。東京五輪の事前合宿で来日した海外のアスリートが製作所を訪れるなど、外国人からも注目される。

 曽祖父の代から続く鍛冶屋に生まれた。自宅近くの工場が遊び場で、物心ついた頃から跡継ぎになると心に決めていた。当時、製作所では鎌だけを扱っていたが、海外から安い商品が入ると雲行きが怪しくなった。「包丁の方が将来性がある」と踏んだ父一之さん(故人)らの勧めで、高校卒業後、福井県の包丁メーカーに弟子入りした。

 福井の親方は「見て覚えろ」と背中で語った。初めの頃は方言が理解できず、指示にもまともに応じられなかった。「いつでもやめてやる」と反発する気持ちもあったが、親方の仕事ぶりへの尊敬の念が勝った。隙を見つけては作業を観察し、技術を習得した。新素材や新技術を取り入れる姿勢にも感銘を受けた。

 業界では弟子入りして一通りの作業を覚えると、数年働いて恩を返すのが習わしだ。7、8年は帰郷できないと覚悟していたが、親方の考えは違った。「教えられることはすべて教えた。後はおやじさんを手伝ってやれ」と背中を押され、3年後に三木(兵庫県)に戻った。

 製作所に戻り、早速包丁の製造に必要な機械を置いたが、気概はあっても取引先がない。「注文がないまま刃物をつくる日々で、腐りかけた」と振り返る。だが、めげずに続けたことで「包丁をつくっている若い子がいる」とうわさになった。三木工業協同組合青年部から誘いを受け、メンバーが紹介してくれたおかげで取引先が増えた。海外に販路を持つ卸問屋ともつながることができた。

 ただ、包丁の世界も一筋縄ではいかない。東京の展示会に足を運ぶようになったが「どれだけ良い包丁をつくっても、印象が薄いと興味すら持ってもらえない」と分かった。「誰かの記憶に残る商品があれば、商機をつかめるかも」。模索する中で、デザイナーらと作り上げたのが「ロリータ包丁」だった。

 2016年に販売を始めると、予想を大きく上回る反響があった。「斬新なデザインを打ち出すことが、一つの成功例であることは間違いない」。手応えを得て19年、人気ロボットアニメの武器を模したおの型包丁を世に出すと、初期生産分がすぐに完売した。

 「新しいアイデアが思いつかないと言ってしまえばそれまで」と力を込めるのは、今まで通りでは時代に置いて行かれるという危機感があるからだ。「伝統を守るのは当たり前。その上で、新しい発想を世界に発信していきたい」。尽きない意欲を武器に、未開の地に足を踏み入れていく。(大橋凜太郎)

【記者の一言】「道のないところは誰も走りたがらないので、自分が先に走る」との心意気。後継者不足が課題の金物業界にあって、田中さんは、成功例を見せることで後進の成長を促す。発想の源は趣味。車やアウトドアなど多分野の知識を蓄えることで「考える頭」が養われるという。「やりたいことが多すぎて、何から手をつけていいか分からない」と笑う。次の一手にもきっと度肝を抜かれるに違いない。

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