三木

  • 印刷
自宅近くの河川敷で出版社の将来を話す高橋武男さん=加東市
拡大
自宅近くの河川敷で出版社の将来を話す高橋武男さん=加東市

 3年かけて準備してきた出版社を今春、古里の加東(兵庫県加東市)で設立した。これまで自宅をオフィスに編集ライターを続け、今回も自分一人が社長兼社員。「地方発の出版にこだわり、ここでしかできない本づくりをする」と意気込む。期せずして設立時期が新型コロナウイルス禍と重なった。「でも振り返った時、会社の創立日を忘れないですよ。初心にも戻れる。何より、コロナ後は地方の時代だと思っていますから」と前を向く。

 生粋のアスリート。中学から本格的に陸上競技を始め、走り幅跳びなどの混成競技で全国大会へ。社高陸上部では三段跳びでインターハイへも出場した。

 陸上一色だった高校時代に、あるテレビ番組を見たことが後の人生を決めた。それは当時、米国で注目されている働き方「SOHO(ソーホー)」を取り上げたものだった。「SMALL OFFICE、HOME OFFICE」の略で、組織に属さず、小さな事務所や自宅で仕事をするスタイル。直感で思った。「こんな働き方がしたい」

 大学でも陸上を続け、インターカレッジに出るほどの実力を誇った。だが、ソーホーの実現には早い方がいいと、卒業後は陸上から距離を置き、ライターの道へ。「書きたいことがあったわけではなく、将来は古里の自宅で仕事を、と考えた答えだった」とほほ笑む。

 大阪や神戸などの広告制作会社、出版社で修業を積んだ。駆け出しの頃、先輩から書いた文章について厳しい指摘も受けたが、「夢の実現のため」と我慢した。一方、次第に人の思いを聞き、伝える面白さを知る。

 主な仕事はビジネス書を中心とした書籍の編集者兼ライター。著者になりきって書く必要があった。「自分は小説家になろうというほど思い入れがあるわけではない。臨機応変に、著者の気持ちになれたことがよかったのかも」。関西ではライターが不足しており、30歳でフリーになっても注文が多い。これまでに70冊以上を執筆した。

 忘れられない言葉がある。かつてベテラン編集者に古里でオフィスを開く計画を話すと、こう返された。「無理や」。その言葉は、後の発奮材料に。6年前にUターンし、自宅をオフィスに夢を実現した。

 出版社設立は、播州織の会社などを取材する中で、地域には魅力的な人やモノがあふれており、受け皿として発信していきたいと思ったからだ。納得のいく本を世に出したいとの思いもあった。

 社名は「スタブロブックス」。スタブロはランナーがスタート時に蹴り出すために使う器具。「人を勇気づけ、一歩を後押しできる本を」との思いを込めた。

 時代は新型コロナウイルスによって大きく変わると見る。「利益を追求するだけの企業は消費者に見透かされる。しっかり利益は追いつつ、社会貢献もできる経営を目指していく」。一歩を踏み出した。(中西大二)

【記者の一言】

 培ったスキルを使って出版社を設立した高橋さん。もう一つの得意分野が陸上競技だ。現在は加東市陸上競技協会の理事を務め、子どもらを指導。トレーニングも欠かさない。キャッチコピーなどの短文は苦手というが、「走る編集ライター」や「ひとり出版社」の題で会員制交流サイト(SNS)でも発信する。タイトルは耳に残る響きで、CMのセンスを感じさせられた。

三木の最新
もっと見る

天気(9月26日)

  • 27℃
  • 22℃
  • 20%

  • 24℃
  • 20℃
  • 60%

  • 27℃
  • 21℃
  • 10%

  • 26℃
  • 21℃
  • 30%

お知らせ