新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、さまざまな行事が中止や延期の決断を迫られています。堀光美術館(兵庫県三木市上の丸町)も、4~9月に予定していた企画展を来年に延期しましたが、準備を進めてきた作家の熱意に報いようと一部作品を先行公開しています。関係者の思いと共に作品を紹介する本企画。今回は、日本画家柳本富子さんの遺作を紹介します。
高校時代に絵の才能を見いだされた柳本さん。美大に進むよう教諭に勧められたこともあったが、断念。しかし、諦めきれず、就職、結婚後に高校時代の恩師が開く教室に通った。ネパールやインドなど世界各地を旅する中で写真を撮り、デッサンを描きためた。
同美術館で開かれている延期企画の「紹介展」では、人物画を中心に4点が並んだ。ネパールで出会った女性は凜としたたたずまいで描かれ、畑で育てた赤タマネギの作品は、完成までに数か月を要した労作だ。現地の宗教への敬意から、人物画の背景には仏具なども描き込んでいる。
一昨年に73歳で亡くなるまで、自然や人間関係を大切にした柳本さん。旅先でスケッチする際に心掛けたのは、現地の人々とのコミュニケーションだった。花の絵をあしらったうちわや色紙を持ち歩いては、お礼の品として渡したという。
夫の波平さん(80)=三木市=は「作品を通して、彼女の生きざまを知ってもらいたい」と話していた。紹介展は9月22日まで。午前10時~午後5時。月曜休館だが、祝日の場合は開館し、翌日休み。入場無料。堀光美術館TEL0794・82・9945
(大橋凜太郎)
