新型コロナウイルスの感染拡大で、節目の第50回が来年に延期された神戸まつり。ミナトと共に半世紀の歴史を刻む、意義や魅力について、実行委員長を務める生田神社名誉宮司の加藤隆久さん(85)と、サンバチームを率いるオリヴェイラ紀子さん(44)に聞いた。(安福直剛)
加藤隆久さん
■国際色豊か一体感生む 実行委員長・加藤隆久さん(85)
-神戸らしさはどこに。
「やはり国際色の豊かなところだ。さまざまな団体や世代が踊りでパレードを盛り上げており、サンバは非常に見応えがある。婦人団体協議会の一糸乱れぬ総踊りにも、毎年感心する。神戸は女性の結束が強く、活動が幅広いと感じる」
-印象に残ることは。
「2009年、区まつりの開催当日、新型インフルエンザ感染者が確認され、翌日のパレードなども中止となり、静まり返ったまちの様子が忘れられない」
-「神なき祭り」といわれるが。
「祭りは本来、神事、直会(なおらい)、饗宴(きょうえん)から成る。神戸まつりも以前は、港湾の安全祈願や宝剣投げ入れなどの神事が重視されていたが、饗宴の部分が目立つようになった。港の繁栄祈願などは行われているとはいえ、寂しい感じがする」
-市民にとって、どのような存在か。
「祭りとは集う人たちが一体になれるもの。饗宴が中心とはいえ、神戸まつりも例外ではない。各区では地域密着の個性的な催しがあり、パレードではみんなで楽しく盛り上がる。毎年100万人近くが訪れる、神戸に欠かせない存在だ」
-新型コロナの影響で延期となった。
「前身のみなとの祭を含め、これまでも戦争や震災など数々の困難を乗り越えてきた。感染の終息は見通せないが、時期をずらしてでも開催し、半世紀という節目を市民全体で盛大に祝いたい。実行委員長として力を尽くしていく」
オリヴェイラ紀子さん
■本場の楽しさ届けたい サンバダンサー オリヴェイラ紀子さん(44)
-神戸まつりに関わるきっかけは。
「元町で生まれ育ち、小学1年の時にいとこに誘われ参加した。踊り好きだったこともあり、1998年にサンバチームを結成。2001年からは毎年、50人ほどで参加している」
-サンバの魅力は。
「中南米特有の太鼓のリズムが大好き。踊っていると、ささいな生活の悩みなどはどこかへ行ってしまう。きちんと踊るのは簡単ではないが、はまる人も多く、今や私の人生はサンバが大半を占めている」
-パレードの中でも非常に見応えがある。
「サンバは衣装の確保がとても大事。私の場合は、母が裁縫が得意なので、毎年衣装を作ってくれた。地形的にフラワーロードには強い風が吹くので、衣装が乱れないように実は苦心している」
-神戸まつりに懸ける思いは。
「神戸まつりが1年のスタートで、それに向けて衣装や音楽などを準備する。(ブラジルの)リオのカーニバルに何度も参加した者として、恥ずかしくない踊りを見てもらいたい。地球の裏側まで行かなくても、少しでも本場の楽しさを神戸で感じてもらえたら」
-第50回が延期に。
「チームで20回目の出場、五輪イヤーと重なったので、「光」をテーマに明るいダンスを準備していた。残念なことになったが、トンネルの向こうには必ず光がある。来年は意義深い回になると思うので、精いっぱい頑張りたい」