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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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日本で唯一、白亜の大理石造り 生活に根付く不殺生の教え ジャイナ教寺院 2020/08/19

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ボードに書かれた礼拝の時間などを説明するマニッシュ・サルカールさん=神戸市中央区北野町3

 ジャイナ教をご存じだろうか。西インド・グジャラート地方を中心に分布し、厳格な菜食主義や不殺生で知られる宗教だ。

 日本で唯一、建物の独立した祈りの場が「バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院」(神戸市中央区北野町3)。神戸には戦前から、貿易に携わるインド人が暮らし、コミュニティーが形づくられていた。

 神戸市のインド人人口は約千人。うち約600人が中央区で暮らす。同寺院の信徒で貿易商のマニッシュ・サルカール(46)さんによると、ジャイナ教徒のコミュニティーは約120人。インドでは人口の約0・4%、数百万人というから、神戸における割合はかなり高い。

 神戸を中心とする県内のインド人は開港以来、数を増し、1937(昭和12)年には600人を超えた。戦時中には多くのインド系商社が離れたが、60年代頃から再び増えていく。特徴的なのは、神戸が世界的な加工・集散地となっている真珠業者。ジャイナ教徒は宝石商が多く、サルカールさん家族もそうだ。

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きらびやかな装飾の扉=神戸市中央区北野町3

 寺院は85年、資金を出し合って完成した。白く輝く大理石は、インドから取り寄せられたといい、金属の扉ともども、動植物などの装飾が美しい。

 サルカールさんいわく、教えの中でも最も重視されるのは「生き物を殺さないこと」。肉や魚を食べないのはもちろん、根菜類も避ける。小さな虫も手で払うだけで、殺さないよう気を付ける。「どんな生き物にも魂がある。今は人間でも、来世は虫に生まれ変わるかも知れませんからね」

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白亜の「バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院」=神戸市中央区北野町3

 輪廻(りんね)転生から魂(アートマン)が解放され、解脱に至るのが、ジャイナ教の目標だという。

 お祈り(プージャ)は午前にあり、午後には灯火を囲む儀式(アールティ)が行われる。サルカールさんも1日1回は、始祖マハーヴィーラの像の前で祈る。この10分ほどのひとときが「生き方を見つめ直す機会になっている」そうだ。

 神戸で生まれ育ち、さまざまな宗教が共存し、異文化を受け入れる風土を肌で感じてきた。その一方で、人種差別や国家間の争いが絶えない世界に、強い口調で訴え掛ける。

 「ここでは皆がお互いに認め合っているから、争いは起きない。神戸でできていることが、他の地域でできない訳がありません」(杉山雅崇)