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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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ハイカラの源流 KR&AC150年(1)外国人クラブ 2020/09/09

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クラブハウス3階の体育館でバドミントンを楽しむKR&ACの会員ら=神戸市中央区八幡通2

 都心・三宮(神戸市中央区)の平日の夜。使い込まれた体育館の床が「キュッキュッ」と乾いた音を立てる。バドミントンのシャトルを打つ音に交じり、英語で話す声が聞こえる。

 創立150周年を迎える「神戸レガッタ・アンド・アスレチック・クラブ(KR&AC)」(同区八幡通2)。外国人たちがスポーツに汗を流し、酒杯を交わす社交の場だ。彼らのもたらす西洋文化に、“ハイカラ”な神戸の気風は育まれてきた。

 「父も叔父もこのクラブに所属していた。実家のように安心できる場所」と、インド人貿易商のセティー・ダランビア・シンさん(59)。1962年に、東遊園地から現在の磯上公園の一角に移転してきたクラブハウスと共に、年齢を重ねてきた。

 KR&ACの発足は、開港2年後の1870(明治3)年9月23日。外国人居留地に商館を構える英スコットランド出身のアレキサンダー・キャメロン・シムが呼び掛け、43人が発起人となった。委員には、六甲山の開祖といわれる英国人アーサー・グルームも。最盛期の昭和初期には約800人の会員を擁したという。

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仕事帰りにフットサルを楽しむ会員ら。現在は他にテニスやクリケットなど計6競技が活動している=神戸市中央区八幡通2

 サッカーやラグビーの試合、クラブハウスで催す演劇やダンスパーティーと、関西最古のスポーツクラブは文化の種をまき、地域と交流した。

 「今は日本人もクラブの会員になれるんですよ」。支配人の東勉(あずま・つとむ)さん(45)は、そう話す。

 以前から、競技に参加できる準会員としての入会は認められていたが、クラブは2014年に一般社団法人化。日本人も正会員になり、役員に就くことができるようになった。

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オフィスビルやタワーマンションに囲まれた磯上公園の一角にあるクラブハウス=神戸市中央区八幡通2

 ミナトと共に発展してきた国際都市・神戸も、時代の流れには逆らえなかった。領事館や外国企業の移転が相次ぎ、阪神・淡路大震災が追い打ちをかけた。クラブの会員数は減少の一途をたどり、一時は50人前後にまで落ち込んだ。

 外国人の会員だけでは、試合を組むのも難しいといい、セティーさんは「クラブそのものがなくなりかねず、日本人に会員になってもらいたい」と期待する。

 昨年には理事長に、提携を結ぶサッカーJリーグ1部(J1)ヴィッセル神戸の三木谷研一副会長(58)が就任。新設した顧問には、アシックスなど地元企業の役員らが名を連ねる。現在は13カ国約80人の会員のうち、半数が日本人だ。

 誰でも気軽に足を運べるのは、クラブハウス1階のレストラン。ランチと共に、伝統の雰囲気を味わえるとひそかな人気を集める。

 「まず、ここがどういう場所か知ってもらえれば、会員数も回復して活気づくはず」と東さん。港都の遺産を地域に開き、次代へつなごうと模索は続く。(西竹唯太朗)

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 関西のスポーツ文化を育んできたKR&AC。その歩みをたどり、いまを訪ねます。