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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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旧オリエンタルホテルの味 受け継ぐ人気洋食店 2020/12/28

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今年9月にオープン20年を迎えたラミのシェフ土井平八さん=神戸市中央区三宮町3(撮影・斎藤雅志)

 1868年の開港を機に洋食文化が花開いたミナト神戸。中でも70(明治3)年に居留地にオープンした旧オリエンタルホテルの洋食は、フランス料理を起源に独自の進化を遂げ、国内外で高く評価された。その味を受け継ぐ洋食店は今日の神戸にも残り、同ホテル出身の土井平八さん(78)が腕を振るう「L’Ami(ラミ)」(神戸市中央区三宮町3)もその一つ。行列必至の人気店として人々を魅了している。

 グルメ雑誌「ミーツ・リージョナル」元編集長の江弘毅(こうひろき)さん(62)によると、オリエンタルホテルは創業当初から料理に定評があり、その礎は、日本初の西洋式ホテル「築地ホテル館」や「横浜グランドホテル」の初代料理長でフランス人のルイ・ベギューが築いた。日本で「フランス料理の父」と称され、神戸に来た後の87(明治20)年にオリエンタルの社主となった。

 ベギューがいた当時、同ホテルに宿泊した英国のノーベル賞作家ラドヤード・キプリングも旅行記で料理を絶賛。ベギューに学んだ日本人コックも次々と育ち、同ホテルは阪神・淡路大震災で全壊するまで神戸の洋食界を代表し続けた。

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カニクリームコロッケ

 一方、ラミは2000年、三宮神社近くにオープン。もったりとした濃厚なクリームが詰まった香住産かにのクリームコロッケや、オムライス、エビフライなどの定番が手頃な価格で食べられる。

 土井さんは高校卒業後、日本初の調理師専門学校「辻学園日本調理師学校」(当時)へ。18歳の夏に「舞子ビラ」(同市垂水区)のレストランでアルバイトをし、そこの調理チーフだった元町の老舗「伊藤グリル」(同市中央区)の2代目、伊藤禄夫さんに刺激を受けた。

 ホテルのシェフになろうと決めた土井さんは、オリエンタルホテルに入社。家庭の事情で退職するまでの5、6年間で野菜場や煮込み場を経験し、名だたる先輩たちから技術を盗んだ。

 シチューやカレーの基本は「オリエンタルのレシピを受け継いだ」という。カレーの仕込みは、タマネギ10キロを弱火で2時間、半分の重さになるまで炒める。それをミキサーにかけ、カレーのペーストに使う。

 同ホテルのカレーはこのペーストに、スライスして素揚げし、乾燥させたタマネギも加えた。2種類のタマネギを使うため「ダブルオニオン」と言われ、主に野菜場の新人が仕込みを担った。土井さんは「ちょっと焦げるだけで苦くなる。こつをつかむのに時間がかかった」と振り返る。

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オムライス

 洋食は「仕込みが全て」が信条だ。毎日午前8時から、ソース類やフライの下ごしらえを始める。同11時の開店後3時間半余りで、平均130食のランチをさばく。土日は150食に上り、カウンター席が10回転する日も。ラミのファンを公言する江さんは「オリエンタルの血を引く味だけでなく、仕込みとスタッフの手際も超一流」とうなる。

 店は今年9月に20年を迎えた。土井さんは「洋食はフレンチやイタリアンのような華やかさはなく、手間暇がかかる。でも、自分で仕込みができるうちは味を守りたい」と話す。ラミTEL078・327・7225

(竹本拓也)