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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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神戸を愛し、神戸に骨をうずめたドイツ人貿易商と妻 子孫に取材、往時を小説化 2021/01/08

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約30年越しで自身初の歴史小説を出版した秋田豊子さん=神戸市垂水区

 居留地に最大6区画を有していたドイツ系のデラカンプ商会。神戸外国人居留地研究会会員の秋田豊子さん(83)=神戸市垂水区=の新著「神戸居留地に吹く風」は、そのあるじと日本人妻のロマンスを描いた歴史小説だ。長年の研究成果をベースに、開港場の群像を生き生きと描き、「居留地が外国文化の窓口であったことを若い人たちに知ってもらいたい」と期待を寄せる。

 主人公の名はチャールズ・ランゲ・デラカンプ。親族の商館を任されることになり、1884(明治17)年、25歳で神戸の地を踏んだという。薬品や織物の輸入と花むしろや竹材の輸出で成功し、4年後に、妻に迎えたのが京都・祇園の舞妓(まいこ)秀華(生悦住(いけずみ)ひで)だった。

 小説は、2人の運命的な出会いから、第1次世界大戦後に引退し、須磨の豪壮な邸宅で穏やかな生活を送るまでをつづる。

 もともと書くことが好きな秋田さん。約30年前にひでをモデルに短編を執筆したことを機に、「あまり知られていないデラカンプ家に光を当てよう」と思い立ったところ、残された写真アルバムを見て「一気に想像が膨らんだ」という。

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須磨の邸宅でのデラカンプ夫妻と親族

 より詳しい史実を知るためにインターネットを駆使し、米国在住の子孫に取材した。家系図や写真の提供を受け、「大学時代に習得した英語がこんなところで役立つとは」と振り返る。人物像の手がかりが少ないひでについても、養女や孫娘に会い、肉付けを試みた。

 参加する居留地研究会では会員の発表から居留地外国人の暮らしぶりを学び、史料調査の方法を身に付けたことも小説には生かされた。

 デラカンプが会長を務めたドイツ人の社交場「クラブ・コンコルディア」が小説には繰り返し登場し、スポーツや音楽、芝居など外国人社会の雰囲気を立ち上らせる。

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クラブ・コンコルディアの25周年記念祭(1904年)

 徳島・鳴門にあった第1次大戦のドイツ人捕虜収容所を訪ねた記録も発掘し、紙幅を割いた。「敵国だったドイツに対し、極めて人道的で友好的な処遇がなされていたことも見逃せない史実」と話す。

 1938年に愛妻を失った後も、デラカンプは帰国することはなかった。空襲で被災した須磨の邸宅にとどまり、45年11月、86歳で亡くなった。

 神戸を愛し、神戸に骨をうずめたドイツ人-。居留地には、今なお人々の心を引き付けるドラマがまだまだ秘められていそうだ。

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 神戸新聞総合出版センター刊。挿絵は居留地研究会会員の宇津誠二さんが手掛けた。A5判209ページ。2200円。

(竹本拓也)