毎年秋に葺合地区の住民が集う「秋華祭」の様子(神戸市中央区役所提供)
神戸市の葺合地区には地域を愛し、地域に根差した活動を続ける人が多い。このうち2人を紹介したい。
小野八幡神社宮司の新渡戸素(もとし)さん(72)=同市中央区。自治会を束ねる「葺合地区自治会連絡協議会」の会長でもあり、約25年にわたり務めてきた。
葺合地区の特長として、自治会活動が盛んで地域のつながりが強いことや、「わが町」として誇りに思っている住民が多い点を挙げる。三宮に近く、最近はマンションの建設も目立つが、「新しく住む皆さんが孤立しないよう、バックアップしたいですね」と話す。
また毎年秋に、コミスタこうべ(同区吾妻通4)を拠点に開かれる恒例の手作りイベント「秋華(しゅうか)祭」を、葺合地区ならではの催しとして「楽しみにしている人も多いですよ」と紹介してくれた。
2001年に始まった祭りは、自治会や婦人会、商店街などの団体が食事やゲームを楽しめるブースを出すほか、地元の小中学生が演奏などを披露するステージイベントも。「民話の里」の石像を巡るスタンプラリーや、葺合地区を練り歩くパレードも好評だ。
新渡戸さんは「若い人にもっと活動に加わってもらって、地域を盛り上げていきたい」と意気込む。
新渡戸素さん
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葺合若菜地区自治会の左納康行会長(72)=同区=は、1958年に発足した自治会で会長職を約10年間続けている。父親も会長だったといい、「伝統ある自治会なので守っていきたい」と思いは強い。
兵庫県市川町の出身だが、葺合地区への愛着は人一倍強い。「何か困りごとがあれば、支え合える人がたくさんいる。持ちつ持たれつの心強い関係です」。ふれあいのまちづくり協議会委員長や民生委員でもあり、地域での顔は広い。
同自治会で長年にわたって続けている活動が、薬剤散布による害虫の駆除だ。都会の中心部だが、民家の間にある溝からは、夏場になると蚊が大量発生することもある。そんな地区を器具持参で回り、美化に努める。
左納康行さん
ほかにも、道路のごみを拾って歩くクリーン作戦やもちつき大会、防災訓練などを定期的に実施するが、「大事なのは、普段からの皆さんとのつながり。街灯の故障や公園の遊具の破損など、地域の細かい悩みがすぐに耳に届くようにしている」と話す。
「大変なときもありますが、達成感は大きい。それに葺合は人情味のある人が多いから、助けられることも多いですよ」とにっこり笑う。(安福直剛)
=おわり=