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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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モトコー今昔(3)アートギャラリー兼カフェ・プラネットアース 工房兼ギャラリー・イラストレイションスタヂオ 2021/03/29

記事

ぬくもりのあるキャラクターを描き続けるマツバラマサヒロさん=神戸市中央区元町高架通

 神戸市にある元町高架通商店街(モトコー)には、この街で育った芸術家たちが息づいている。アート、ファッション、食べ物も。昭和レトロの残り香が漂う空間、そこに神戸らしい新鮮な光も差し込む。

 1番街にある工房兼ギャラリー「マツバラマサヒロイラストレイションスタヂオ」は9年前に開店した。神戸市灘区で生まれ育ったマツバラマサヒロさん(56)が構えた。赤いシャツに黒いハット。作品も暖色系が目立ち、優しそうなキャラクターが描かれている。

 狭い店内の壁や天井、至るところにポストカードサイズを中心とした作品がびっしり。独自の世界のなかで繊細に筆を振るう。「中学生の頃からモトコーの魅力に取りつかれた。アメカジの古着店やレコード店を目当てに通い詰めたんです」とマツバラさん。

 当時は「この店は何屋かな?」という店が多かったといい、焦げた鍋や壊れた椅子を「なんぼでもええよ」と売る商店主もいた。雑多で不思議。マツバラさんにとっては魅力的だった。

 JR西日本による再整備工事に伴う立ち退きで、今年中にモトコーを出ることが決まっている。工事終了後、この商店街に戻るかどうか…。その先はまだ決めていない。「ずっとこのままで続けられたらいいのに」と漏らした。

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 2番街のアートギャラリー兼カフェ「プラネットアース」を経営する芸術家、宮崎みよしさん(75)もモトコーに魅了された一人。「頭上から、ガタンゴトンという電車の音がする。レトロで独特の空間はここだけのもの」とうれしそうだ。

 JR三宮駅近くの街で生まれ育った。元町周辺は学校帰りにふらっと立ち寄れる、慣れ親しんだ町だったが、モトコーはちょっと違った。「子どもの頃はどこか怖かった」

 いつの頃からか、その怖さが、独特の魅力と感じるようになった。1993年に長田区から元町に事務所を移転、2008年にプラネットアースを開いた。

 わい雑でレトロ、そして子どもには少し怖い雰囲気。この魅力を伝えたくて、プラネットアースでモトコーの今と昔を切り取る写真展を18年に開いた。

 再整備工事が進むにつれ、街の風景が変わっていく。ありふれた街になりそうで寂しい。「ここの独特の空気感を、後世に少しでも残していきたい」。この街で育ち、ここで生きる宮崎さんの「モトコー愛」はしぼんでいない。(森下陽介)