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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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岡本商店街の名店探し(4)ベトナム刺しゅうの魅力 雑貨とカフェ「Zenma」 2019/02/19

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 人は岡本(神戸市東灘区)を石畳のまちと呼ぶ。どのくらい石畳が敷き詰められているのか? 調べてみると…。桜御影石でできた厚さ10センチの石畳が何と7550平方メートルにわたって広がっていた。岡本坂、ゲート坂、キャンパス通り、フェスティバル通りの4本の目抜き通りを中心に、281店が軒を連ねる岡本商店街。その加盟店数が「市内最多」と聞いて、これまた驚いた。普通に歩いてもおもしろくない。目抜き通りから奥まった路地や目立ちにくいビルの上階、地下の名店を見つけてみよう。名付けて「岡本めぐりウエ・シタ・ヨコ」。同商店街のアイドル「石だたみボーイズ」のメンバー8人のナビゲートで、個性豊かな店主たちに話を聞いた。

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 阪急岡本駅(神戸市東灘区)の2番線ホームから山手方向を見上げると、朱色の旗がたなびく民家が目に入る。旗に誘われるように歩を進めるとベトナム雑貨とカフェの店「Zenma(ゼンマ)」が現れた。店内雑貨の9割は、店主の岩村啓子さん(71)が現地の工房に発注し、取り寄せたものだ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)に勤務していた時、ハノイから来日した上司に、ベトナム製のポーチをもらった。精巧で美しい刺しゅうに心打たれ、自身も同国へ。市場や小売店を歩き、刺しゅうの服や雑貨に触れ、さらに夢中になった。

 出店を決めたのは同国一のファッションデザイナーと称されるミン・ハン氏との出会いだった。アオザイや刺しゅうなど自国の衣服文化を守り、世界に発信しようとする精力的な活動に感銘を受け、「あなたの服を日本で紹介したい」と告げた。2003年にゼンマを開店。ミン氏の服や高品質な刺しゅう雑貨を買い付けて販売した。

 より独創性のある商品を販売したいと、ゼンマのデザイナーらがデザインした刺しゅうを現地の村に発注する方式に切り替えた。現在、元アルバイトでベトナム出身の女性と共同で、同国に合弁会社の設立を目指している。

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 岩村さんは、岡本駅北部地域を、親しみを込めて「裏岡本」と呼ぶ。ゼンマは、16年前、裏岡本に初めてできた店。出店前の工事中、「何ができるんやろ」と、店をのぞき込む人がたくさんいたという。その様子から着想を得て、店名を中国語で「何」を意味するゼンマに決めた。南側に比べ、目立ちにくいため、朱色のシンボルフラッグも掲げた。

 「『ここは何』の好奇心で来店する人たちに、ベトナム刺しゅうの魅力が伝われば」 (真鍋 愛)