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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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地元に愛される看板配達人 神戸・東灘の松下さん 2019/03/16

記事

 神戸市東灘区本庄町3の本紙森専売所。ここに、職員に信頼され、地域住民から愛される“看板”配達人がいるという。話を聞いて早速、同専売所に向かうと、ミニバイクにまたがった小柄で年配の男性が現れた。

 同専売所で最年長の松下幸央さん(76)。1995年から配達を続ける。もともとは東灘区内でオーダーメード専門の婦人服店を経営していた。しかし、同年の阪神・淡路大震災の影響で顧客の多くが、自宅が壊れて引っ越したり亡くなったりしたため、経営難に陥ったという。「無気力に近所をぶらついていて、見つけたのが新聞配達だった」

 配達は朝夕2回。朝は午前2時半ごろに出勤し、約170戸に本紙を配る。勤続20年以上の間に少し変形した右親指が勲章だ。「ポストに入れる時、新聞を折り曲げる作業の癖で、いつの間にか曲がっていた」と笑う。

 中野一幸所長(64)は「『松下さんがやめるまでは』と、他紙から本紙に変えてくれたお客さんもいる。夕刊配達の際には、放課後の子どもらにも“いじられる”愛されキャラ」と太鼓判を押す。

 松下さんは「人間、いつ死ぬか分からない。その時までは全力で続けたい」と力を込める。(西竹唯太朗)