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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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民生委員0人のまち 高齢者の見守り維持に不安 2020/01/17

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 「0人」

 兵庫区のキャナルタウンウエスト(約1200戸)の民生委員の数だ。正確にはウエストの住民に担い手がおらず、近隣住民が兼務することになったという。

 3年の任期を終え、昨年11月に退任した吉川章子さん(75)は「同じ住民でバトンをつなぎたかったんやけど…。本当に手を差し伸べるべき人はウエストにいないと見つけられへん」と吐露する。「キャナルふれあい給食会」を主宰する影本峯子さん(78)も敷地内で見掛けた人に声を掛けているが、色よい返事は得られていない。

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 ウエストには自治会がなく、あんしんすこやかセンターなどが受け皿となり、日々の暮らしに必要な情報を住民に伝えている。だが、戸数が多く、「各戸を訪問するのは難しい」と職員は口にする。

 ウエストで暮らす高齢者の見守りを実質的に担ってきたのは、住民らが約20年前に結成した「友愛グループ」だ。当初は5人ほどのグループが四つあり、週に2、3回は一人暮らしの高齢者宅を訪問してきた。しかし、そのグループも一つ、また一つと姿を消し、昨年2月、三つめのグループが解散。最後のグループも代表者が昨年末に転居し、岐路に立つ。

 立ち上げからグループに関わってきた住民の春次子さん(87)は「亡くなったり、引っ越して出て行ったり…。見守る側も、見守られる側もいなくなったね」とさみしげだ。影本さんは見守りグループの再結成を目指し、住民同士の話し合いを進めているという。

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 借り上げ復興住宅として現在ウエストに入居する被災者は117世帯と、ピーク時の5分の1になった。被災経験のない新住民は交流や自治会活動に関心が低く、高齢で結びつきが強い被災者らとの間で分断が生じている。

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 様変わりを象徴するかのように、西広場には待機児童解消に向け、市が教育・保育施設の建設を進めている。25年の歳月は、家を失い再出発の場所として入居した「被災者の住みか」を「好立地で子育て世代に優しい賃貸マンション」に変えつつある。

 取材を終えた日の夜、自宅のあるウエスト周辺を歩いた。人工運河には住宅を照らす街灯の明かりがきらめき、昼とは違う落ち着いた表情を見せる。きょうで阪神・淡路大震災から25年。運河の街で暮らした被災者たちの災後は幸せだったのだろうか。「見守る側も、見守られる側もいなくなった」。道すがら、春さんの言葉を心の中でつぶやいた。(伊田雄馬)