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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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創業100年の焼き穴子専門店 4代目店主が守る最後のとりで 2020/01/26

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 強火のガスバーナーで穴子をさっと焼く。外はかりっと、中はふっくら仕上がるのは、この道約40年の腕がなせる技だ。創業100年近い「焼きあなご魚卯」(神戸市兵庫区塚本通5)は御旅に店を構えて、約60年になる。店主の肥前正則さん(61)は「自慢の味を多くの人に味わってほしい」と話す。

 店のルーツをたどると100年ではきかない。肥前さんが祖父から伝え聞いた話によると、江戸時代、現在の神戸市中央卸売市場周辺で、海産物の卸問屋をしていたという。

 「100年ほど前に柳原蛭子神社の近くで焼き穴子の専門店を始め、私で4代目」と肥前さん。現在は県内外の有名スーパーや、すし店へ納品するほか、ネット販売、一般客向けの店頭販売も行っている。

 1日の始まりは午前3時。早朝の出荷に向け、串打ちしておいた穴子を焼く。28本にも連なるバーナーの前に立ち、絶妙の火加減と時間で、次々と焼き上げていく。スーパー向けの仕事が終わる昼前には、地元の住民らが財布を片手にやってくる。一息つく暇もなく、翌日分の串打ちに取り掛かる。年末などの繁忙期は、1日に1600匹準備することもあるという。

 「御旅市場があった頃は、アーケード内に人があふれていた。この近所にも何店か焼き穴子の店舗があったが、今はもう無い」

 人もまばらな通りを見つめ肥前さんは「この味を守っていくためにも、うちが最後のとりでにならないと」と力を込めた。(喜田美咲)